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シリーズ 家賃滞納の督促A

 前回は「初期督促」の重要性をお伝えしました。早期に、マメに催促することによって、「うっかり」「ルーズ」な入居者を教育することと、「支払えない」「支払おうとしない」入居者を発見することが大切です。今回は「法的手続き」についてお伝えします。

@法的手続きの本当の目的

 借主と散々に交渉した挙げ句、どうしても入金してくれないので、最後の手段として訴えるのが「法的手続き」と考えがちですが、本当の目的は違うところにあります。何のために、法的手続きに訴えるのか、本質を考えてみましょう。

 一般的に見ると、法的手続きの最終目的は「強制執行」にあると思われます。賃貸の場合なら、滞納している家賃を強制的に回収(動産執行や債権執行)したり、明け渡しを強制的に行うことです。しかし、これらの行為は本当の意味でオーナーに利益をもたらしません。まず時間と費用がかかりすぎますし、家財などを差し押さえてもロクな金額になりません。預金や給与を差し押さえる、と言っても現実的ではありませんね。

 もちろん、中にはこのような手段に訴えないと、どうにもならない相手がいますから、その場合は一日も早く着手して解決をはかった方が、被害が少なく済みます。でも多くの借主は、「強制執行」などになる前に解決できる道があるはずです。

 そこで「法的手続き」の目的を「強制執行」ではなく、「話し合い決着」を早期につけるための“道具”として捉えるべきだと考えています。「初期督促」では応じようとしない借主に法的な手続きを開始することで、こちら側が本気であることを伝え、「払うか出ていかないと大変なことになる」というプレッシャーを与えるのです。

A賃料回収のための法的手続き

 では具体的にどのような方法があるでしょうか。どの方法を選ぶにしても、管理会社や弁護士などの専門家に相談すべきだと思いますが、法的手続きのあらましについて知っておくことは、オーナーにとって無駄ではないと思います。

○公正証書

 遺言状や契約書など大切な書類は公正証書にしておきますね。公正証書とは、公証人が公(おおやけ)の立場で証明した事を示す文書で、証拠としての効力があり、その内容に違反すれば強制執行することも出来る、強力な文書です。
 滞納借主に遅れている家賃を支払ってもらうために「支払約定書」を作成する場合がありますが、その文書を公正証書にしてもらいます。それによって「支払いが遅れたら強制執行」というプレッシャーが発生します。

作成するには借主に公証人役場に同行してもらう必要がありますが、委任状に実印を押して印鑑証明を添付すれば、代理人が公証人役場に行って作成することができます。費用もそれほどかかりません。法的手続きの中では、裁判所に関わることなくできるので、一番手軽な方法ではないでしょうか。

ただし、作成には相手の同意が必要ですから、交渉に応じてくれるケースしか利用できません。

○支払督促の申し立て

 滞納借主に送る督促状を、裁判所から発送してもらう方法です。裁判所から送られてくるので、オーナーが郵送する「内容証明郵便」よりも数段上の心理的効果があります。特に個人の連帯保証人には大きなプレッシャーになります。
 更に、この督促状が届いて2週間が経つと、裁判で判決を取ったのと同じ効果が得られます。つまり裁判をしないで「強制執行」のプレッシャーを与えることが可能です(実際には「仮執行宣言の申し立て」に、あと2週間が必要ですが)。

 手続きは、物件所在地を管轄する簡易裁判所に、用意されている申立書に記載して提出します。賃貸借契約書などの証拠書類を持参してください。費用も収入印紙や郵便切手など、裁判の半額程度で済みます。
裁判を起こすのは煩わしい、でも、内容証明郵便を送ったのに効果がない、というようなケースに利用したい手続きです。

この方法の欠点は、裁判所からの郵便が相手に届かない(留守や受取拒否など)と効力がないことと、相手が異議の申し立て(払うつもりはあるので少し待って欲しい等)をすると、通常の裁判に移行してしまうことです。

○少額訴訟

裁判ではありますが、簡単な手続きで短期間に結論のでる方法で、ご存じのオーナーさんも多いと思います。もっとも「敷金を返して欲しい」と、オーナーや管理会社が訴えられるケースとして利用される方が多いのですが・・。 まず、60万円以下の金銭の訴えに限られます。滞納額が60万円以上の場合は、一部として60万円分を請求することで、この制度を利用することができます。

原則として、その場で判決がでますから短期間で解決できます。前述の「支払督促」と比べると、実際に裁判所から呼び出されるところに、プレッシャーをより大きく感じる借主・連帯保証人が多いかもしれません。 管轄は物件所在地の簡易裁判所です。もともと訴訟制度を手軽に利用できるために作られた手続きなので、申し立ての方法も専用用紙が用意されていて難しいものではありません。

B効果を上げるために

 それらの手続きを取ったとしても、メインは話し合いでの決着を目指すのは前述の通りです。それぞれの申し立て手続きを行ったあとに、その事実を告げて、支払うか退去するか、交渉を続けます。 法的手続き無しでの交渉より、申立てをした(あるいは申立ての準備が整った)あとの交渉の方が効果が高いのは、論ずるまでもないでしょう。特にまともな連帯保証人なら、この事実ですぐに支払いに応じるはずです。 強制執行は、それでも応じようとしない不良借主・連帯保証人に対する最終手段と考えます。

以上の3つの方法は、強制執行するにしても可能なのは回収だけで、明け渡しの執行力はありません。次回は「明け渡し強制執行」のできる法的手続きを説明します。

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