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120年ぶりに民法改正はオーナーに影響しますか?

Q.先日のテレビで、「120年ぶりに民法が改正される見通しで、敷金の取り扱いが変わる」というニュースを見ました。
家主にとって重大な変更があるのでしょうか。

A.たしかに、政府の「法制審議会・民法(債権関係)部会」というところで審議されて、来年に民法改正案を提出する方針、と報道されていますね。
目的は「国民に分かりやすい民法を目指す」ということですから、良いことだと思います。
改正案は「敷金の規定」だけでなく、個人の連帯保証の原則禁止、時効の消滅、法定利率など、多岐に渡っているようです。

さて、ご心配されている敷金について検討してみましょう。
まず敷金についての規定が現在の民法にはないのですが、改正案では「家賃などの担保」と明確に定義されています。
だから契約が終われば返還義務が発生しますが、その際の原状回復については、「借主は通常の使用による傷みや経年変化を修理しなくてよい」ことが明記されています。
今では常識となっている考え方ですね。

昭和30年~50年代の頃は、原状回復費用負担ということで、敷金が返還されないことが多かったのは、ご存じの通りです。
あるいは「敷引き」という条件で、多額の費用を負担してもらっていました。

でも、民法に規定のなかった当時でも、裁判になれば、「経年変化や通常損耗による修繕費用は貸主負担」という判決が下されています。
ただ、そのために裁判に訴える借主も少ないし、そもそも「借主には負担義務がない」ことがあまり周知されていませんでした。

そこで平成10年に、当時の建設省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を作成して、このとき初めて「借主に通常損耗による修繕費用の負担義務はない」ことが公(おおやけ)になりました。
業界人ですら、「そのことを初めて知った」という人がいたくらいです。
折から、簡単な訴訟手続きとして「少額訴訟制度」が創設されて、敷金返還訴訟が増えたという経緯があります。
そのあとの消費者契約法も、その流れを後押ししました。少しずつオーナー側に、「畳やクロスの修繕費用は借主に請求できない」という認識が広がっていったと思います。(もちろん故意・過失は別です)

つまり、いまさら民法で規定されなくても、「借主は通常損耗等は修理しなくてよい」という契約内容が一般化しています。

Q.では、この改正は意味がないのですか?

A.そんなことはないでしょう。
国土交通省のガイドラインがあっても、これは法律ではありません。
「妥当と考えられる一般的な基準」を示したもので、オーナーに契約内容を強制するものではありません。

判例もあくまでも判例ですし、それを知っている人はごく一部です。
民法という、国民に馴染みのある法律で明文化されることに意味はあるはずです。

ただ、オーナー様の立場として捉えたとき、「だからどうなる」ということは特にありません。
実態に民法が「追いついた」ということだと思います。

たとえばオーナー様が、敷金や保証金を賃料の3ヶ月~4ヶ月分以上も預かり、「畳やクロスや清掃費用はすべて借主負担」と規定する契約書を使用しているなら、「それは法律違反だ」と主張してくる借主が増えることは予想できます。
まだ、それが一般的とされている地域だったら、借主からの反発が強くなるというカタチで、この改正は影響がでるでしょうね。

最後に、オーナーとしては費用負担が増えることは避けたいので、通常損耗や経年変化による修繕費用を「少しでも」借主に負担してもらいたいと思いますよね。
でもその額は、せいぜい家賃の1ヶ月か2ヶ月分の範囲内です。
それよりも、少しでも空室期間を短くできるような、「借主に選んでもらえる賃貸条件」を採用することの方が、「収益を確保する」ためには大切な選択なのではないでしょうか。

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