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更新料について考える

すでにご存じだと思いますが、7月23日に京都の地方裁判所で、「更新料は違反」という判決が出ました。
更新料については裁判で何度も争われて貸主側が勝っていたのですが、初めての「消費者契約法に照らして無効」という判断に、我々も驚いています。
とは言っても、10勝1敗のようなものですから、大相撲なら申し分のない戦績なので騒ぐことはないのですが、今回は何故かマスコミが大きく取り上げています。
賃貸業界の新聞では小さな取り扱いなのに、読売新聞などの一般紙でも取り上げ、夜のニュース番組でも具体的に説明していました(ワールドサテライト)。
一番気になるのは多くのメディアで紹介されて、多くの入居者の方たちに「更新料を支払わない」という風潮が生まれることだと思います。
そこで今月は「更新料」について特集します。

まず、事の発端となったニュースから紹介いたします。

賃貸住宅の更新に家主が更新料の支払いや保証金の敷引特約を借主に強いるのは消費者契約法違反だとして、京都府長岡京市の20代の会社員の男性が家主に計46万6千円の返還を求めた訴訟の判決が7月23日、京都地裁でありました。
辻本利雄裁判長は「更新料などを借主に負担させる合理的理由はなく、契約は無効だ」として全額返還を家主に命じました。
借主側の弁護団によると、更新料をめぐる訴訟は東京地裁などで借主側の敗訴が続いていました。
2001年に施行された消費者契約法に基づき更新料について無効とした判決は今回が初めてで、「消費者保護の動きを加速させる画期的な判断だ」と評価しました。
訴えによると、借主の男性は2006年4月に京都市内のマンションに入居する際、保証金35万円(その内30万円が解約引きの特約)を支払い、月5万8千円の賃料と、2年ごとの更新時に賃料2カ月分の更新料を支払う契約を締結しました。
2008年1月に更新料11万6千円を支払い、その年の5月に解約を申し込みました。保証金の大半は敷引特約で返還されませんでした。
訴訟で借主の男性は「借主に賃料以外の金銭負担を強いることは、消費者に二重の義務を負わせるもので違法だ」と主張。被告の家主側は「更新料には家主が契約更新を拒絶する権利を放棄することへの対価などが、敷引には物件の損傷回復費などが含まれ、いずれも賃料の補充・前払いなどの性格がある」と反論しました。
判決は「基本的に借主が賃料以外の金銭を負担することはない」と指摘。そのうえで、「更新料や敷引は賃料に比べて高額で、入居期間と関係なく一定の金額を負担させている。賃料の補充の性質があるとはいえない」などとして家主側の主張を退けました。
契約書には更新料や敷引特約の記載がありますが、借主と家主の間では情報量や交渉力に格差があることを踏まえ「借主に具体的、明確に説明したと認められない以上、無効だ」と判断しました。
家主側の弁護士は「十分な審理をせず拙速な判決を出されたことは遺憾だ」と述べました。

記事は以上です。

更新料の性質とは

そもそも更新料とは何なのでしょうか。
賃貸斡旋に長く関わっている身としては、正直じっくりと考えたこともありませんでした。慣習として、貸主が借主に2年ごとに請求するもので、その収入は貸主にとって大きなものです。
しかし法廷で争われる段になると「何となく慣習だから理由もなく貰っている」では済まないようです。その理由が納得いくものなら裁判で勝てますし、曖昧なら「消費者契約法によって無効」と判断されてしまいます。
そこで裁判で貸主側が主張した“更新料の性質”は、
①更新拒絶権放棄の対価
②賃借権強化の対価
③賃料の補充
④中途解約権 となっています。

正直な感想では、更新料を以上の理由によって徴収しているという感覚は無いと思うのですが、歴史を振り返って、そもそも更新料が誕生した経緯を考えると、そのような理由が出てくるのだと思います。そして今までの裁判では、この主張が一部でも認められて連戦連勝だったわけです。

①更新拒絶権放棄の対価について
貸主には更新を拒絶する権利がありますが(契約満了の半年前までに通知する必要あり。ただし「正当事由」が無いと認められない)、更新料の支払いを約すことで、その権利を放棄するというものです。
②賃借権強化の対価について
借主は更新料を支払うことより貸主から契約期間中に解約を申し入れられることがなくなります。借主の賃借権が強化されることになるので、その対価としての性質を有るというものです。
③賃料の補充について
更新料も賃料と同様に,賃貸物件を使用収益させる対価として考えるという主張です。
賃料の一部という捉え方ですね。
④中途解約権の対価について
そもそも貸主には中途解約権はないのですが(借地借家法30条によって無効),借主だけに中途解約権が付与されるのは対等ではないので、それを補うための対価という考えです。

以上の4項目は、個人的には「無理があるかな」と思える項目もありますが“更新料の理由”については、しっかりと認識しておいた方が良いようです。
何故なら、更新料の性質が契約書に具体的に書かれていた方が、万一争いになったときには有利でしょうし、そもそも争いを防止する役目も果たすことになるからです。

今回の裁判所の判断ポイントは

裁判官にも色々な考えの方がいるので、勝つときもあれば負けるときもあるのでしょうが、今回はどんな点が判断根拠となったのか検討してみましょう。
まず、前項で挙げた4つの“更新料の理由”については、ほとんど認めませんでした。

①と②については、
貸主の前には“正当事由制度”というハードルがあり、借主の優位性は元々あるもので、更新料を支払うことによって得られるものではない、と切って捨てています。
※貸主側が勝った事例(2007年1月30日、京都地方裁判所 以下、勝訴例という)でも、この①と②については「根拠が希薄」としています。
③については、更新した後の実際の使用期間の長短にかかわらず,賃料の2か月分を支払わなければならない約束は、賃料の一部とは認められない、としています。
※勝訴例ではこの点は認めていて、借主は更新料を含む出費を比較検討したうえで物件を選択しているので更新料は“賃料の補充”にあたる、としています。

④については、今回の契約書に「貸主は半年前に通知すれば解約できる」というような条文があるので特に不対等とは言えない、としています。
全体を見渡してみると、
・更新料が2年ごとに2ヶ月分であること(関東の倍になります)
・更新してから短期間で退去したのに負担する更新料が一定であること
が大きな要因となっているように思われます。
では、今後は貸主として どのようにしたら良いでしょう。

更新料ゼロにするという選択

2年ごとに1ヶ月分の更新料を徴収するということは、計算してみると家賃の約4%を上乗せしているのと同じことになります。
5万円の家賃なら2千円程度です。最近では、この程度の家賃交渉は珍しくありませんから、募集条件として「更新料ゼロ」を謳い文句にしてはどうか、という考え方です。家賃の4%に固執するよりも、一日でも早く空室を埋める方に専念する方が、本来の賃貸経営の姿ではないか、という意見も聞かれます。
賃貸情報サイト「HOME’S賃貸」に問い合わせのあった物件のうち、「礼金ゼロ」の占める割合がアパートでは4割程度あることが報告されています。新築などのアドバンテージがないと、礼金も取りにくい状況となってきているようです。更新料も同じようになっていくのでしょうか。

しっかりと徴収するためには

更新料の支払いについてトラブルを防止するためには、事前に借主にしっかりと説明し、認識してもらうことが大切になります。賃貸借契約で更新料の負担は当たり前という認識が貸主や不動産業者側にありますが、消費者側には常識というほど浸透されていないことを知るべきです。
なので、あらゆる書面で更新料についての記述を心がけるべきです。あらゆる書類とは、募集図面・入居申込書・賃貸借契約書(契約書の記述は当たり前ですが、太字にしたり赤文字にする)などです。
質(たち)の悪い借主だと、十分に理解して入居したくせに、退去時に難癖を言ってくる者がありますが、その場合でも、書類上で何重にも分かりやすく説明してあれば、万一争った場合でも有利に戦えるはずです。
そして、書類上で完璧であれば、訴えることさえ諦めるかも知れません。

次に更新料の条件ですが、2年ごとに1ヶ月分が上限でしょう(関東ではそれ以上の例はないと思いますが)。
そして、更新してから解約までの月数によっては、徴収した更新料の一部を返却するというような条件も「あり」だと思います。
例えば、「更新後6ヶ月以内に解約した場合は50%を返却、1年以内の場合は20%返却」などです。
先月紹介した「敷引き訴訟で貸主が勝訴」という事例でも、裁判で勝った要因の一つとして、「契約期間によって敷引き金額が段階的に設定されていた」ということがありました。こういう合理的な条件が裁判官には心証がいいようです。

8月27日に大阪高裁で重要な「更新料訴訟」の判決があります。
2007年1月30日の京都地方裁判所で貸主側の勝訴を受けて借主側が控訴したものです。双方に多数の弁護団が付いた負けられない裁判です。どちらが勝っても最高裁まで持ち込まれるだろうと言われていますから最終決着は先ですが、それにしても今回の判決は重要です。
次号では結果と判決内容の解説ができると思います。

 

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