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取り壊した時に評価が下される

今回は「築20年以上の物件」に対する心構えについて、考えたいと思います。
賃貸建物の一生を30年とすると、最初の10年は、空室も家賃の値下がりも心配なく、メンテナンスにも費用が「ほとんど」かかりません。次の10年は問題が出始めますが、その度合いは、まだ深刻ではありません。20年を過ぎた最後の10年は、30年間でかかるメンテナンス費用の半分以上が、この期間に必要になります。空室や家賃の値下がりや、入居者の「ヒューマングレード」の低下による諸問題が降りかかってきます。こんな「苦難の20年過ぎ」だからこそ、心構えや対処法を意識しておくことが重要なのです。

その① 「何年、賃貸物件として使用するか」を意識しておくこと。

たとえば、木造アパートの使用期間を最初から「20年」と決めておく、としましょう。「そんな勿体ないこと、あり得ない」と思うかもしれませんね。でも、20年で完済するようにローンを組んで、その間に得られるキャッシュフローが「割に合う」ように計画できたら、荒唐無稽と思える、このような考え方も「あり得る」のではないでしょうか。この期間ならメンテナンス費用は多くはかかりませんし、空室や値下がりに「本格的に」悩まなくても済みます。
仮に20年経ったときに「まだ続けよう」と方針転換しても、借入れは「ゼロ」ですから、新築時にかかった費用の半分を投資するような「大リニューアル」を実施して、寿命を20年伸ばすという考えも「あり」です。

建物の一生が20年なら、外壁塗装やエアコンの取替えは、築10年の時に一回だけ行えばいいですね。給湯器は微妙ですが、なんとか部品の取替えで、20年を「入れ替えなし」でもたせようとするでしょう。このように使用年数を決めると「ちょうど良い時期」が示せるようになります。キッチン、トイレ、ユニットバスも、「化粧直し」程度は施すとしても、20年の間に取り換える必要はありません。

でも、建物の使用期間を30年と想定したら・・・。これらの設備や給湯器等は、築15年のときに取り換えた方が効率がいいでしょう。一生の半分が過ぎたときが「一番の替えどき」です。使用期間が40年なら?あるいは50年なら? メンテナンスや、設備の入れ替えのタイミングは、戦略的に変わってくるはずです。だからまず「何年、賃貸物件として使用するか」を意識しておきましょう。

その② 「ローンを完済する目標時期や貯蓄目標」を決めておくこと。

最初にローンを組むときは、「なるべく低金利で長く」という条件で借りるでしょう。その方が、キャッシュフローが多く得られます。しかし、築20年から「苦難の時代」が来ると予想できているので、「いつまでに完済させる」という目標を定めるべきです。もちろん「苦難」が来る前に・・。あるいは貯蓄の目標を定めて準備しておくべきです。そうすれば、キャッシュフローが多く得られる「最初の10年」で、お金を浪費してしまうことはないでしょう。

「建物を30年以上使い続ける」ということは、おそらく「大リニューアル工事を行う」はずです。そのときに「新築時の借入れが半分近く残っている」状態だったら、打つ手が限られてしまいます。「何年使用するか」と「いつまでに完済するか」はセットで考えておくべきなのです。

その③ 「立退料ゼロ」を目指して、定期借家権の導入を考える。

30年にせよ、50年にせよ、建物は必ず「取り壊し時期」がきます。そのときに問題になるのが「立ち退き料」です。それを「ゼロ」とするために、築20年を過ぎたら、定期借家契約の導入を検討する、というアイディアです。

「築20年過ぎて定期借家なんて、借り手が見つからなくなる」と思うかもしれません。それは、契約期間を5年とするなど、いろいろと工夫の余地はあるはずです。
「普通借家契約を定期借家契約に切り替えることができるのか」という質問を、たまにいただきます。答えは、定期借家制度が導入された2000年3月1日より後に結ばれた普通借家契約なら、当人同士の合意があれば、定期借家契約に切り替えることができます。契約更新時に「契約を切り替える合意書」を取り交わして、新たに定期借家契約を締結します。2000年3月1日より前から住んでいる借主は、本人同士が合意しても「切り替え」は認められないので「別の工夫」が必要になります。
「立退き料」は、揉めた場合は高額になります。裁判においても、建物に老朽化が「ある程度」認められた場合でも、200万、300万程度の立退き料を支払うことで、正当事由を認める判例が見られます。
「立退料ゼロ」とするための準備は、5年~10年先に「取り壊し」が見えてきた賃貸物件にとっては、とても重要なことなのです。

その④ 相場の範囲内に実効賃料を収めておくこと。

ゼロにできないまでも、立退き料を低くするためには「いくらで貸しているか」という実効賃料が大きく関係してきます。たとえば、駅から10分の木造アパート2DKの家賃は、一番高い新築から築年数の古い建物まで、〇万~〇万という相場がありますね。いくら古くても、この相場の巾から外れて貸してはいけないのです。その場合は、「立退き料」が高額になることを覚悟しなければなりません。相場より安く住んでいる借主は、同じ間取タイプに住み替えると家賃負担が増えるので、引っ越しが困難になります。その分は、ある一定期間は、退去を依頼した貸主が負担することになるのです。「古い建物に手も加えたくないから、家賃を下げて貸す」という考えを続けていると、最後に、このような事態が待っていることになります。「そこにしか住めない」借主だけを最後に残してしまうと、「立ち退き交渉」のときの大きな壁になります。相場の内(といっても下限ではなく)に実効賃料を収めておく程度の投資は、少なくとも必要、ということです。

たとえ、築20年を過ぎても、30年を迎えても、しっかりと収益とキャッシュフローが稼げる賃貸経営を目指したいものです。
そのためには、賃貸経営は「取り壊した時に評価が下される」ということを忘れないことですね。

 

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