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国の政策、住宅ストック重視へ転換
国の住宅政策が大きな転機を迎えている。所有からストック重視への方向転換だ。バブルの崩壊で地価が下落し、住宅を所有する意欲が低下、賃貸住宅を政策のなかに組み入れなければ市場の活性化が見込めなくなった。消費者も所有から利用へという賃貸肯定派が増加している。市場の変化でファミリー向け賃貸など質の高い住宅の拡充も求められている。しかし、持家一辺倒できた住宅政策に賃貸住宅を加えるには、まず市場整備から取り組まねばならない。これまでの持ち家政策のしわ寄せが賃貸住宅政策に押し寄せている。
国は、これまでのマイホーム取得オンリーだった住宅政策をストック重視に転換した。
地価の上昇局面では、貨貸→分譲マンション→戸建て、というライフサイクルがうまく回っていた。しかし、バブル崩壊でこの「住宅すごろく」が成り立たなくなった。
国土交通省の「土地問題に関する国民の意識調査」によると、「賃貸で構わない」とした割合は、95年度調査では6.5%だったが、その後、年を追うごとに増加、2000年度調査では11.4%と約2倍まで増えている。止まらない地価下落、長引く不況による雇用悪化、収入減もあり、賃貸派増加は続きそうだ。
その一方で、賃貸住宅の居住水準は持家と比べ大きく立ち後れている。例えば、ワンルームタイプの賃貸マンションは利回りを重視するため、狭小な住戸が多いのは周知の通りだ。また、住宅密集市街地の木造賃貸アパートはバリアだらけの劣悪なものが多いようだ。
住宅の質は基本的に広さだが、とくにファミリー向けに賃貸の広さをどう確保していくか。地価が下落している現在の局面は絶好の機会だ。
旧総務庁の「平成10年住宅・土地統計調査」によると、一住宅あたりの居住室数は賃貸2.8室に対し、持家は2倍の6.0室。延べ面積は賃貸44.5uに対し持家は3倍近い122.7uだ。
ファミリー向けなど「質の向上」については、ここにきて、これまでの持家偏重のツケが回ってきたようだ。とくに、都心部でファミリー向け賃貸が不足している。
そこで自民党などは、大量供給にともない今後見込まれるオフィス需要の減少にも対応しようと、都心の既存オフィスビルの住宅転用を促進しようという考えを打ち出している。すでにオフィス転用のファミリー向け公共賃貸に対しては、国も助成を開始した。
このほか賃貸住宅についての新しい動きとして、大都市圏を中心にファミリー向け賃貸を供給してきた都市基盤整備公団が、都心の高層賃貸住宅の上層部を民間事業者にスケルトンで賃貸し、それを自由な企画で民間事業者が賃貸として供給するという物件も出てきた。賃貸住宅の新しい可能性が広がってきているようだ。
国は今年3月、「賃貸住宅市場整備研究会」を設置し、市揚整備に本腰を入れ始めた。同研究会の検討の中心は、賃貸住宅管理の適正化とファミリー向け賃貸住宅供給のための方策などである。
これらの国の動きに対し、民間の反応は鈍い。一つは、賃貸住宅がこれまで投資物件であるというのが大きな理由だろう。オーナーが利益を目的に住宅を貸す、というのが賃貸住宅であり、この目的は今でも変わらないからだ。入居者確保が最優先、というのが、大家・オーナーの根底にある。“低コストで大きな儲け”が基本的な考えだ。
それが、ファミリーと比べて利回りのいいワンルームマンションに代表される小スペース賃貸住宅の比率が高い背景だ。その意識が変わらないなかでファミリー向け賃貸を拡充するには、国の具体約な施策が必要になっている。
重点施策としている証券化も良質な住宅供給につながる可能性を持っている。しかし、現在の市場環境のままでは、利回りを重視する証券化だと小型賃貸ということになってしまう。住宅市場整備研究会でも「民間主導とはいえ、ファミリーを拡大するには何らかの施策は不可欠」との意見が相次いだ。
総理府統計局の98年「住宅・土地調査」によると住宅総数が4392万2000戸に対し賃貸は38%の1673万戸となっている。民間賃貸だけでも27%の1205万戸だ。この賃貸比率のなかでは、立地に恵まれた物件でなければ入居者を確保しにくい。住みやすい物件でなければ入居者が減る、という流れが生じた。
そこで安定入居者を確保するため、個人では対応しにくいきめ細かな管理のできる企業に管理委託するという流れが生まれた。実際、賃貸住宅の管理委託比率は、不動産適正取引推進機構の調査によると65年から74年までの10年間で25.0%だったものの、85年以降は53%に高まった。現在では60%前後になったと見られている。国も施策を打ち出すのに管理会社相手ならば出しやすいという考えがある。オーナーの意識改革と賃貸管理企業の管理比率の増加、そして国の具体的な施策がファミリー向け賃貸住宅の拡充には欠かせない。
ファミリー向け賃貸住宅を拡大するにも庶民を対象にするならば、ある水準の賃料に抑制しなければならない。一つの試算がある。年収が700万円。うち、賃料が20%を占めるとすると月額12万〜14万円。この中には駐車場代も含まれる。とすると、月額10万円ほどが家賃として振り向けられる金額だという。都心のファミリー向け賃貸でこの金額が可能だろうか。何らかのバックアップが必要だ。
賃貸市場を重視する動きは具現化している。大手デベロッパーも分譲が頭打ちになっても、経営が安定するよう賃貸に力を入れ出した。ハウスメーカーも持家の落ち込みをカバーするために積極的に取り組んでいる。
今後10年間で民間の賃貸住宅だけで400万戸が築30年以上になり建替えの必要が生じる。業界の賃貸住宅市場への取り組みが注目される。
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