「オーナー列伝」 〜データを蓄積し築37年でも満室〜


昭和41年に建設、兄弟3人で保有

 首都圏のJR中央線荻窪駅より徒歩9分、築37年のOアパートを所有するN氏。実際には兄弟3人で共同所有しているが、営業活動などはすべてN氏が担当して行っている。
 「戦前に富山から上京した父が、今で言う『脱サラ』をして不動産事業を始めました。このOアパートも、アパート建設をするために父が土地を取得したのです」
 間取りは1DKが中心で戸数は30。昭和41年に竣工したころは珍しい5階建て、駐車場付きということで高い入居率を保っていたが、ここ数年は建物の古さなどから、常時1割程度の空室が出るようになっていたという。

 そこでN氏は、空室を埋めるために、アパート経営をハード・ソフト両面から大幅に見直すことを考えたのである。
 まず2年前にペット飼育を認めている。
 「4部屋が空室という厳しい時期でしたので、敷金を通常2カ月のところ3カ月分をもらうことを前提に1匹に限りペット飼育を認めました。空室が一気に埋まっただけでなく、現在8部屋が犬か猫を飼っています。ただし、犬は鳴き声がうるさい、という苦情もあり、頭を悩ませています」
 また、日本人の保証人がいれば外国人の入居も認めており、現在、中国人のビジネスマンが1人入居している。

すべての部屋の空室履歴を保存

 賃料条件についても細かく見直しを図っている。
 自ら「メモ魔」と称するN氏は、すべての部屋について、いつからいつまで空室となっていたのか、埋まった場合にはどの程度の賃料水準で決まったのか、という点についてすべて記録をし、グラフとして保存している。こうしたデータを蓄積することで、最も埋まりやすい賃料条件、というものを常に考えている。

 「気分的なものかもしれませんが、賃料については千円単位の数は偶数にした方が反響がある、と実感しています。空室が2カ月以上続く場合には募集賃料を下げるのですが、その場合にも2000円単位で下げるようにしています」ちなみに賃料は部屋にもよるが9万円程度だ。

 礼金にも柔軟に対応している。「荻窪周辺は礼金2カ月というのが主流なのですが、その中で1.5カ月分で差別化を図って来ました。しかし、それでも4カ月空室となっていた部屋があったので一気に礼金1カ月で募集をかけました。これは効果てきめんで、即座に入居者が決まりました」

宅配ボックスやCATVを完備

 次にハード面。まずは5年前に宅配ボックスを設置している。
 「賃貸住宅新聞で宅配ボックスの特集がなされているのを見て真っ先に導入しました」
 共用部分についても5年前に全面改修を実施、さらにCATVの導入にも踏み切っている。
 しかし、それだけではまだアピール力が弱い。そう考えたN氏は、空室が発生するたびに和室を洋室に転用するリニューアルを行っている。

 「畳張りをフローリングに変えるのはもちろん、収納スペースの新設などで1部屋100万円くらいの費用がかかります。また、空室が出た分についてはカギもすべてピッキング対応のものに変更しています。」
 こうした努力が功を奏し空室は徐々に減少傾向にあるという。
 しかし、それよりも、この経年物件が好調を維持しているのは、N氏のマメさによるところが大きい。

家主の集まりに積極的に出席

 N氏は自らの物件のチラシを常に持ち歩いている。
 「仲介会社から連絡があった場合、出先からでもすぐFAXが送れるように準備をしています。チラシの裏面には、FAXを送った先とその日時をすべて記しておきます。しかも、こちらからFAXした会社と、先方から依頼があってFAXした会社ではインクの色を変えて区別がつく様にしています。これにより、どこの会社から、FAXを送ってからどの程度の期間で反響があったのか、ということを把握することもできるのです」
 ちなみに一度空室が発生すると、100件はFAXを送るという。