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改訂された「国土交通省のガイドライン」

Q. 「国土交通省のガイドライン」というものが改訂されたと聞きました。
原状回復費用について「貸主と借主のどちらが負担するのか」が書かれているようですが、そもそもガイドラインは守らなければいけないのですか?
たとえば「タバコのヤニによる汚れ」は借主に負担してもらうことは出来ないのですか。

A.   正確には「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」といいます。昨年(平成23年)8月に改訂されました。平成10年3月に、当時の建設省が初版を公表しました。
私事ですが、このガイドラインを読んだときに、自分の認識と随分違うのに驚いた記憶があります。
私が退去立会いをしていた時は「畳の表替え」や「クロスの張り替え」は借主に負担してもらうのが「ほぼ当たり前」でした。
誰も教えてくれる人がいなかったので「原状回復」という言葉を辞書で調べて、自分なりに「元に戻すこと」と解釈していたのです。
畳もクロスも新品の状態で住み始めたのですから、退去するときに「元に戻す」のは当たり前で、それが「原状回復」という言葉の意味と信じていました。
信じているから、入居者さんとの交渉にも堂々と臨んでいました。
「契約書通りに負担をお願いします!」と、一歩も引かなかったです。信じている、ということは強いですね。
ところが、あとから知ったことですが、昭和30年代の判例に、すでに「賃貸住宅の原状回復に関する費用負担の一般原則の考え方」は示されていたのです。
つまり、借主が負担するのは、
「故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用方法を超えるような使用による損耗等について」のみです。そして、
「自然的な劣化・損耗等及び借主の通常の使用により生ずる損耗等について」は貸主負担だったのです。
平成10年の建設省のガイドラインで決まったのではありません。40年近くも前からある「一般原則」を明確にして公表したに過ぎません。

このガイドラインが、私だけでなく世間の人にも「費用負担の原則」を知らしめました。
折から民事訴訟法が改正されて「少額訴訟制度」が生まれたので、「敷金返還訴訟」が多発するようになりました。
以来14年が経ちましたが、「自然損耗は貸主負担、故意・過失は借主負担」という原則は、不動産業者や貸主の間では「一般常識」となった感があります。
このガイドラインは平成16年に改訂されて、今回は2回目の改訂になります。
実は、ご質問の中に「勘違い」の箇所があります。それは、「貸主と借主のどちらが負担するのか書かれている」という部分です。
ガイドラインには「どちらが負担すべき」とは書かれていません。
契約自由の原則ですから、貸主と借主で個別に判断して決めてください、と書いてあります。
個々の契約の内容について行政が規制することは適当ではない、とも書いてあります。
説明をそのまま引用すると、
「本ガイドラインは、近時の裁判例や取引等の実務を考慮のうえ、原状回復の費用負担のあり方等について、トラブルの未然防止の観点からあくまで現時点において妥当と考えられる一般的な基準をガイドラインとしてとりまとめたものである。」となっているのです。
一般原則は「あくまで」原則ですから、原則と異なることを双方で合意して決めても問題はありません。
ただし「公序良俗に違反することは無効」です。借家法に抵触する部分も無効となります。
そして、原則と異なる合意事項は、賃貸借契約書に「特約」として、具体的に書きなさい、とガイドラインは示しています。そのときは、

①借主が負担する内容と範囲が具体的に示されている
②本来は借主が負担しない「通常損耗分」について負担させる事が説明されている
③負担させる費用が妥当である
④借主が自分の意志で「負担します」と意思表示している
などの要件を満たすことを求めています。ですから「守らなければならない」という存在ではありません。

最後に「タバコのヤニの汚れ」については、ガイドラインは「通常を超えた使用による損耗」となっています。つまり借主の負担です。
ただし、「その度合い」が難しいです。どこまで汚したら「借主の負担」とするかの基準が示しにくいですね。ガイドラインには、以下のように書かれています。
「タバコ等のヤニ・臭い(喫煙等によりクロス等が変色したり、臭いが付着している場合)」は借主の負担と。
そして補修する単位については、「喫煙等により当該居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることが妥当と考えられる。」と書いてあります。
部屋全体にヤニが付き、臭いもする状態を想定しているようです。
その場合は、室内すべてのクロスの張替えかクリーニング費用を借主に請求することは可能です。

 

 

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