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法令に遵守した未収賃料の回収方法

法令に遵守した未収賃料の回収方法

コンプライアンスという言葉をよく聞きます。直訳すると「法令遵守」ということのようです。
事業を行うにおいて、法律や規則、社会規範などに違反することなく、それらをきちんと守ることをいいます。
「不二家」「赤福」「吉兆」など最近の例でも、コンプライアンス違反があるとマスコミも容赦しない傾向にあります。
いまマスコミで、「家賃滞納者に対する追い出し行為」として、管理業者や貸主に厳しくコンプライアンスを求める風潮が強くあります。
もともと家賃を払わない方が悪いですし、滞納者に厳罰を与えるような法整備が不足していることも要因ですが、法令に違反してはならないのも事実です。
オーナー様としては、世間で騒がれているからといって督促の手を緩めるわけにはいきません。
通常に行っている督促行為の中で法令違反かどうか疑わしい事柄について解説いたします。

長期不在者への対応

賃貸借契約書でよく見かける条項で、「借主が1ヶ月以上不在する場合は貸主に文書で通知すること」とあります。
これは、何の通告もなしに借主が不在となる場合、不慮の事件・事故に遭遇するなどの不測の事態があったときに、貸室の管理上問題になるからです。
また、親族や連帯保証人から借主の行き先について問い合わせがあったとき、確たる対応ができなくなります。
したがってこの条項は有効ですが、「通知しないときは契約解除」というのは行き過ぎですし認められないでしょう。

借主が家賃を滞納したまま長期不在となったり行方不明の場合、貸主としては債務不履行を理由に賃貸借契約を解除することになります。
しかし、貸主の解除の意志が行方不明の借主に伝わらなければ、勝手に賃貸借契約を解除することはできません。
その段階で勝手に部屋に立ち入ったり残存物を処理することは自力救済(自分の権利が侵害されたときに、法的手続きによらないでそれを回復すべく活動すること。)にあたり禁止されています。
したがって、契約解除・明渡し訴訟を提起し、判決を受けたうえで強制執行する方法をとるべきです。

残余財産(残存物)の処分

契約解除と建物の明渡しと同時に「滞納賃料の支払い請求」の訴えを起こして、その判決に基づいて強制執行(残余財産の差押え・競売)を行い、滞納賃料の一部に充当して残余財産の処分をします。
賃貸借契約書には、「残された動産類について所有権を放棄したこととする」と定められていることが多いのですが、契約書通りに「その残余財産を勝手に処分」すると法令違反となります。
「建物明渡しの法的手続きが行われて、借主の占有が効力を失う状態になる以前にこれら動産類を搬出処分することは認められない」と考えられますので、実務上は慎重に扱わなければなりません。
マスコミでも問題になっている行為として、「借主が賃料を滞納した場合に、貸主が勝手に部屋の鍵を交換して、借主が部屋に入ることを阻止することによって、事実上、滞納賃料の支払いを促す」ことが報告されていますが、これは、住居侵入罪(刑法130条)、器物損壊罪(刑法261条)、場合によっては建造物損壊罪(刑法260条)に該当する刑事事件となってしまいます。
民事的にも、その間の賃料は請求できませんし、ホテル等の宿泊費や慰謝料を損害賠償請求されるおそれがありますので、決して行ってはならない行為です。
鍵穴を塞いでドアを開けられないようにする「ドアロック」も、不動産侵奪罪となりますので違法です。
それでは、賃貸借契約書に、「賃料が滞納した場合には、賃貸人あるいは管理業者は鍵を交換できる」と規程しておいた場合はどうでしょうか。
裁判になれば、その条項は公序良俗に反し無効とされる可能性がほとんどです。
では、滞納時に話し合いで、「×月×日までに支払わなかった場合には、賃貸借契約は解除され、借主は直ちに退去する。任意に退去しなかった場合は、貸主において室内にある荷物を処分してもかまわない」という念書が取り交わされた場合、貸主は裁判等によらないで、その荷物を処分して明渡しを実行することができるでしょうか。
裁判になれば、やはりこの念書も、公序良俗に反して無効とされて刑事事件にまで発展する可能性が高いです。
つまり、このような念書があっても、借主が任意に明渡しを履行しない場合には、裁判を提起して、明渡しの判決を得て、さらには、強制執行の手続きをとる必要があるということです。
このことは、たとえ、明渡せとの判決があっても、借主が任意に出て行かない場合には、貸主が自力で、明渡しを実行ではないということです。
さらに、借主側に用法違反・賃料滞納等の債務不履行があり、それを理由として賃貸借契約を解除する場合に、契約書に、「その場合は即時に賃貸借契約を解除できる」という条項があったとしても、その債務不履行が貸主との間の信頼関係を破壊する程度のものでない限り、まず、その履行を求めることが必要です。
そして、それを履行しないときに初めて契約を解除を申し出ることができます(民法541条)。
無催告解除条項は、借地借家法によって手厚く借主が保護されているので、現実的には無効とされています。

このような事態を解決するために、賃貸借契約書の中には、契約解除等の権限を連帯保証人に与えるという条項を規定しているものがあります。
さらにもう一歩進めて、借主が長期不在でその行方がわからない場合には、連帯保証人に賃貸借契約の解除と借主の動産を処分できる権限を与える条項を規程しているものもあります。
しかし、連帯保証人に解除通知の権限を与えるという条項は無効とされる可能性が高く、動産の処分権限も同様なので、貸主の自力救済となってしまうおそれが大です。

このように借主が行方不明になってしまい、連帯保証人や親族も行方が分からない事態になりますと、貸主側としては明渡し訴訟+強制執行しか方法はなさそうです。
時間と費用がかかりますが、刑事事件に巻き込まれたり損害賠償されるリスクを考えたら、法令遵守の精神で行動するべきでしょう。

賃貸借契約において親族などのしっかりした連帯保証人を取っておけば、その間の賃料はもちろん、裁判と明渡しに要した費用も請求できるはずですから、やはり最後は本人と連帯保証人を含めた与信について、入居審査を厳密に行うことが大事ですね。

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