前回のメルマガで紹介したプランニングに基づいて
このプランによる収益とキャッシュフローを計算します。
この収益とキャッシュフローを算出する計算式については、
「賃貸管理中級編」の4回目のメルマガで、
「オーナーの収益を簡単に知る方法」で解説してあります。
忘れた方は、見返しておいてください。
最初に、現状の収益を計算しておきましょう。
あるべき賃料、
つまり満室になったら得られる年間賃料は、
現在は6万円で募集している、とのことですので、
6万×12戸×12ヶ月で、8,640,000円になります。
現状は空室が5部屋ありますので、
空室のロスは、6万×5戸×12ヶ月で、3,600,000円です。
すると、実際の家賃収入は、
8,640,000円から3,600,000円を差し引くので、
5,040,000円になります。
このアパートの運営費を、
あるべき賃料の15%と概算すると、1,296,000円です。
本当は、実際に係っている経費を合計するのですが、
ここではパーセントをかけて概算で計算しています。
すると、実際の賃料収入から経費の運営費を引くことで、
このアパートの純利益がでます。
5,040,000円-1,296,000円で、3,744,000円です。
この金額が、このまま何もしない時の収益です。
築28年で、ローンは残っていないので、
税引き前のキャッシュフローも収益と同じ3,744,000円になります。
この現状の収益とキャッシュフローを、
いくつかの提案によって、改善させたいのです。
つぎに、前回のメルマガのリノベ案を実行すると、
どのように収益とキャッシュフローが改善されるか、
計算してみましょう。
リノベ工事するのは、空いている部屋の5つですが、
ここでは、計算をシンプルに分かりやすくするために、
12室のすべてを工事した場合で計算いたします。
6万円で募集している家賃を10%下げた場合で計算しましょう。
この場合は空いている5部屋だけを値下げした
54,000円で計算するところですが、
家賃を下げたら他の部屋もやがて
下げた家賃と同額になっていきますので、
12部屋すべてを値下げした家賃で計算します。
あるべき賃料、
満室のときの年間賃料は、
5万4000円×12戸×12ヶ月で、7,776,000円になります。
空室のロスは、
値下げによって41%から20%に改善すると想定すると、
7,776,000円×20%で、1,555,200円です。
すると、実際の家賃収入は、
7,776,000円から1,555,200円を差し引くので、
6,220,800円になります。
このアパートの運営費を、
あるべき賃料の20%と概算すると1,555,200円です。
実際の賃料収入から経費の運営費を引いて純利益を出します。
6,220,800円-1,555,200円で、4,665,600円です。
これが、家賃を下げて募集したときの収益です。
借り入れの返済もありませんので
キャッシュフローもおなじく4,665,600円になります。
このケースでは、リノベをしても、家賃を下げても、
収益とキャッシュフローは、ほとんど同じになりましたね。
最後に、
もっと安いリフォームをしたときのシミュレーションをしてみます。
一部屋につき30万円の予算です。
この場合は募集賃料は据え置きの6万円で募集することにします。
あるべき賃料、
満室のときの年間賃料は、
6万×12戸×12ヶ月で、8,640,000円になります。
空室のロスは、
リフォームによって41%から15%に改善すると想定すると、
8,640,000円×15%で、1,296,000円です。
すると、実際の家賃収入は、
8,640,000円から1,296,000円を差し引くので、
7,344,000円になります。
このアパートの運営費を、
あるべき賃料の20%と概算すると1,728,000円です。
実際の賃料収入から経費の運営費を引いて純利益を出します。
7,344,000円-1,728,000円で、5,616,000円です。
これが、30万円のリフォームをしたときの収益です。
今回は一部屋30万円で12戸すべての工事をした想定ですから、
借入金は360万円になります。
3年で返済すると、年間返済額が120万円と概算して、
5,616,000円-1,200,000円で、
税引き前のキャッシュフローが4,416,000円になります。
これで、リノベーションしたときと、現状のままのときと、
代替案の2つを加えて、4つのシミュレーションができました。
一覧にすると、このようになります。
この、それぞれの収益が、それぞれの物件の実力です。
リノベーションをしたときが、圧倒的に物件力が高くなりますが、
投下した費用の返済金を差し引いたキャッシュフローで比べると、
270万円かけたリノベ案と、30万円のリフォーム案と、
家賃の1割を値下げした案が、それほど差がないという結果になりました。
今回は、リノベーション案と、値下げ案と、リフォーム案で、
大きな差がつきませんでしたが、この結果は問題ではありません。
リノベーションにかかる費用や、その後の募集賃料や、
値下げする額などによって、結果は、その都度変わります。
多額の費用をかけても、
リノベーションした方が圧倒的に
キャッシュフローが改善することもあります。
シンプルに家賃を下げる案が一番よいこともあります。
重要なのは、なるべく妥当な数字を入れた結果として、
どの案が、大家さんに一番 受け入れてもらえるか、ということです。
プランを作った側も、このシミュレーション一覧を作ることで、
思っていたこととは違う現実が見えることもあります。
大事なのは、大家さんの収益とキャッシュフローです。
そして、大家さんの賃貸経営に対する考え方と目的です。
それを実現するための方法のひとつとして、
リノベーションという効果的な提案があるのです。
リノベ工事を受注することが目的ではありません。
次の記事では
「リノベ提案の家賃保証の考え方」について解説いたします。