「賃貸経営と地震災害」について考えるシリーズの2回目になります。
今回のテーマは「オーナーが準備できること」です。
立地のリスクと避難計画を知る
同じ地域の建物でも立地によって災害の危険度は異なります。
それを知ることができるのがハザードマップです。
ハザードマップとは、自然災害で想定される危険な場所や、
避難経路・避難場所の情報を地図上にまとめたものです。
地震・洪水・土砂災害などの種別ごとに作られていて、
市区町村役場のホームページ、
国土交通省のポータルサイトで入手することができます。
具体的には、国交省の「ハザードマップポータルサイト」から、
全国自治体が作成したハザードマップへのリンクを集めた
「わがまちハザードマップ」が閲覧できます。
また国交省が作成した「重ねるハザードマップ」でも、
洪水、土砂災害、津波、高潮など複数の災害リスクを
地図上で重ね合わせて見ることができます。
これらは災害リスクを減らす上で役立つ資料なのですが、
住民の認知度は高くなく、
ある調査では約半数が「存在を知らない」
「避難の参考にしていない」と回答した例もあるようです。
オーナー様にご覧いただくことで、
ご自宅や賃貸物件の災害リスクの現状を知ることができます。
さらに、ハザードマップを基に作成された「防災マップ」には、
いざ自然災害が発生した時の行動計画が示されていて、
避難経路や避難所の位置、
避難所までの所要時間などが記載されています。
この2つの資料を把握するとともに、
入居者にも周知しておくことが災害被害に対する準備の第一歩となります。
賃貸物件の耐震診断と耐震補強
もし、ご所有の賃貸物件が新築および築浅で、
建築基準を満たして建てられているなら、
たとえ災害に遭ったとしても、損害賠償されるリスクは低いでしょう。
しかし、築年数が10年20年30年と経過している場合は、
建物と設備は当然に老朽化していますし、
法律による基準が改正されている場合もあるので、
リスク回避のための確認が必要になります。
その確認の方法として耐震診断があります。
この費用については、
全国の殆どの自治体で補助事業(補助金制度)が実施されています。
また耐震診断の補助金制度と共に、
認定を受けた建築物の耐震改修工事費用の補助が受けられる制度も
年々整いつつあります。
地方自治体によって様々な規定や条件が定められていて、
対象建物や金額は一定ではありませんが、
窓口に相談することで知ることができます。
「新築時の建築基準を満たしていればよいのでは?」
という疑問についても解説しておきましょう。
1995年に施行された耐震改修促進法では、
一定規模以上の建物を
「特定建築物(賃貸住宅では3階以上で1000㎡以上)」とし、
その所有者は建築物が
「現行の耐震基準と同等以上の耐震性能」を確保するよう耐震改修する、
という努力義務が求められています。
この努力を怠っていた場合に、
地震災害による建物倒壊や落下による被害者から訴えられたときの
損害賠償リスクはゼロとは断定できないでしょう。
このように賃貸経営にリスクマネジメントは必須ですが、
耐震診断と耐震改修を行うかどうかは、
その可能性とコストを考えて、個々に判断して決めるしかありません。
まずは自治体の補助金制度について
検討するところからスタートとなります。
そのほかに準備しておくこと
いざ災害が起こった時は誰でも慌ててしまうものです。
それに備えて必要な情報はメモにして、
目立つところに掲示しておくとよいと思います。
まずは、
固定電話や携帯電話がつながりにくくなったときのための通信手段です。
「災害用伝言サービス」として、
・災害用伝言ダイヤル(171)、
・災害用伝言板(web171)、
・携帯各社の伝言板などが用意されています。
インターネットが利用できるように、
・00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)
という無料Wi-Fiも提供されるようです。
実際に、賃貸建物の被害状況や入居者の現況を
調査するのは管理会社になりますが、
そのためにも災害時に連絡を取り合う方法を確認しておきましょう。
最後に、地震災害に対してオーナーが準備できることとして
「保険加入の検討」があります。
このテーマは次回の3回目で解説いたします。