前回の記事では、
リノベーションのプランニングの前に、
ターゲットを絞ることの大切さと、
それをベースにして、リノベ工事予算の上限を決めることを解説しました。
今回は、研修などで使用していた事例をもとに、
プランニングを考えたいと思います。
下記の物件で考えてみましょう。
築28年の木造2階建てアパートです。
面積は41m2です。
12戸のうち5室が空いていて、空室率が41%になっています。
玄関から直接にキッチンで、和室も二間つづきですから、
かなり人気のない間取りタイプです。
洗面も この状態です。
プランニングの初めにターゲットを絞りましょう。
面積は41m2ですから、2DKや1LDK分の広さですが、
今回は、単身世帯をターゲットにすることにします。
単身世帯は、25m2から30m2が適正な広さですが、
仲介の担当者から、
広めの物件を探している単身者が増えていて、
ちょうど良い物件がないので、
ファミリーやカップル世帯が住んでいるような2DKを
仕方なく選んでいるお客様が最近は多い、
という情報があったからです。
そこで、40m2の単身者向けの間取りにリノベすることに決めました。
30m2の単身向けなら6万円が家賃の相場です。
この40m2の単身向けは希少ですし、
収入に余裕のある人がターゲットなので、
想定家賃を 75.000円に設定します。
3年で回収することを目標とするので、
一部屋にかけることのできる予算は、
75,000円×12ヶ月×3年で、270万円となりました。
この予算内で、単身者向けに人気のある物件に、
リノベーションするプランを考えます。
何をするべきか意見を出し合って、リストアップしました。
・ユニットバスは、28年で一度も変えられていないので新しくしたい。
・外に洗濯物を干さないで済むようにバス乾燥機をつけたい。
・さらにバルコニーの内側に、室内物干し用の金具をつけたい
・キッチンも、かなり古びていて、
表層にシールを貼っても再生は難しいので、
新しくして、すぐ近くに冷蔵庫がおけるようにしたい。
・洗面ユニットと洗濯機が置けて脱衣室にもなるようなスペースを、
ユニットバスの横に設けたい。
・現状のトイレは暗くて不清潔な印象なので、
まったく新しく作り直したい。
・便器はオシャレなウォシュレット一体型にしたい。
・玄関からキッチンや室内が見えないように壁とドアで仕切りたい。
・玄関の壁にコート掛けを付けて姿見のミラーを取り付けたい。
・ウォークインクローゼットが人気なので作りたい。
・間取りは1LDKタイプにする。
・リビングが明るくなるように、
ベランダ側の部屋との仕切りはガラス戸にしたい。
・この戸は可能なら大きく開放できるタイプのドアにしたい。
・和室は洋間に変更する。
・床材はすべてフロアタイルにする。
・壁と天井のクロスも新しくするが、
トイレ、クローゼット、洋間の一面にアクセントクロスを採用する。
以上のプランを基に、リノベプランを作ります。
検討の末、出来上がった間取り案は以下の通りです。
この提案に基づいて「対策の効果」に数字を入れてみます。
リフォーム工事代は、一部屋270万円で、
空室は5部屋ですので、
270万円×5部屋で、1,350万円になりました。
表の中の「現状」の部分は、
全戸数は12戸で入居数は7戸。
入居率は58%でした。
リノベ前の家賃は平均6万円でしたので、
7部屋で420,000円です。
これが、リノベ直前の家賃収入です。
対策後は、すべての部屋が決まると想定して、
入居率は100%になります。
家賃収入は、リノベ後の募集家賃が75,000円ですので、
5部屋分で375,000円がプラスになります。
元々の420,000円に足されて、795,000円の家賃収入になります。
リノベーション工事によって、
毎月の増収賃料は375,000円になりました。
年間では 375,000円×12ヶ月で、450万円になります。
この年間の増収賃料を、リノベーション工事代で割ると、
今回のリノベプランの利回りが計算できます。
450万÷1350万で、利回りは33.3%になります。
3年で回収できるようになりました。
ものすごくシンプルに計算しましたが
基本プランを作る過程は、理解いただけたのではないでしょうか。
次回は
この事例に基づいてシミュレーションを作る過程を解説します。