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更新料の最高裁判決について

本日、最高裁から更新料に関する判決が下されました。
ご存じの通り、貸主側の完全(?)勝利です。
実に「良かった」と思います。

今だから言うわけではありませんが、貸主側の勝利は予想していました。
ただ、それには「条件」が付くと思っていたのです。
たとえば、
1年ごとに2ヶ月分を徴収したり、
2年ごとに2ヶ月分を取るのは「無効」とか。
契約書や重要事項説明書や他の書類(募集図面など)で、
更新料の条件を消費者に分かりやすく表示しなければならない、とか。

でも、判決の趣旨を読んでみると、そのような「条件」は付いていません。
説明文には
「その内容は,更新料の額を賃料の2か月分とし,本件賃貸借契約が更新される期間を1年間とするものであって,上記特段の事情が存するとはいえず,これを消費者契約法10条により無効とすることはできない。」
とあるのです。

※特段の事情とは下記のことです。
「更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎる」

つまり、1年ごとに賃料の2か月分の更新料は、「高額に過ぎる」ことはない、と言っているのですね。

これと比べれば、首都圏の2年ごとに1か月分の更新料は「まったく問題がない」ということになろうかと思います。
まずは、「過去に払った更新料を返せ」という裁判に忙殺される心配はなくなりました。
「やれやれ」ですね。

かと言って、手放しで安心してはいけません。
今回の判決でも「更新料」は、消費者契約法10条の、
「消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する」ものであることは認めています。
ただ後半部分の、
「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には該当しないので、
「消費者契約法10条違反ではない」と結論しているのだと思います。

ですから、ネット広告の記載や、募集図面の表示や、重要事項説明書の交付時期(契約締結日より前に行う)や、契約書の条項の書き方には、「文句をつけられないように」した方がいいでしょう。

同じ最高裁の、
3月24日の「敷引き特約」への有効判決、
7月12日の「敷引き特約」への有効判決につづき、
とてもバランスの取れた「常識的」な判決が続きました。
さすが最高裁判所の判事さんたちですね。

「行き過ぎた消費者保護の流れ」が少し変わっていくような予感がしますが、楽観的すぎるでしょうか。

今回の「勝訴」が喜ばしいのは、「更新料返還訴訟」に振り回されるのを免れたからです。
これからも「更新料」を取り続けることができるかどうかは「別の話」です。

私達の判断基準は「オーナーの収益=キャッシュフロー」ですから、
更新料があっても、「空室の長期化」や「退去する借主の増加」に結びつかないなら、今までの条件を変えなくてもいいでしょう。
でも、「みなし賃料表示」が一般化されたり、他社のネット広告に「更新料なし」が目立つようになってきたら考慮しなければなりません。

そのときはオーナーの説得が必要ですが、
「裁判で勝ったのだから・・・・」という理由が前面に出てくると「やっかい」ですね。
心配のし過ぎでしょうか。

せっかくの朗報なので、心から喜ぶことにしましょう。

今回の最高裁判決で取り上げられた契約条件と
、 下記に掲載しておきます。

賃料 月額3万8000円
更新料 賃料の2か月分
定額補修分担金 12万円
期間 平成15年4月1日から平成16年3月31日まで

平成15年3月14日,重要事項説明書を交付(契約日より前なのに注目)
平成15年4月1日,賃貸借契約を締結

次の3回は更新料7万6000円を支払った。
1.平成16年2月27日
2.平成17年2月28日
3,平成18年2月28日
平成19年3月31日まで合意更新に応じなかったので法定更新された。
その際の7万6000円を借主は支払っていない。

以下、判決文の途中からですが「消費者契約法10条により無効ではない」くだりを掲載しておきます。

4 しかしながら,本件条項を消費者契約法10条により無効とした原審の上記判断は是認することができない。
その理由は,次のとおりである。

(1) 更新料は,期間が満了し,賃貸借契約を更新する際に,賃借人と賃貸人との間で授受される金員である。
これがいかなる性質を有するかは,賃貸借契約成立前後の当事者双方の事情,更新料条項が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考量し,具体的事実関係に即して判断されるべきであるが(最高裁昭和58年(オ)第1289号同59年4月20日第二小法廷判決・民集38巻6号610頁参照),更新料は,賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり,その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると,更新料は,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。

(2) そこで,更新料条項が,消費者契約法10条により無効とされるか否かについて検討する。

消費者契約法10条は,消費者契約の条項を無効とする要件として,当該条項が,民法等の法律の公の秩序に関しない規定,すなわち任意規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重するものであることを定めるところ,ここにいう任意規定には,明文の規定のみならず,一般的な法理等も含まれると解するのが相当である。

そして,賃貸借契約は,賃貸人が物件を賃借人に使用させることを約し,賃借人がこれに対して賃料を支払うことを約することによって効力を生ずる(民法601条)のであるから,更新料条項は,一般的には賃貸借契約の要素を構成しない債務を特約により賃借人に負わせるという意味において,任意規定の適用による場合に比し,消費者である賃借人の義務を加重するものに当たるというべきである。


また,消費者契約法10条は,消費者契約の条項を無効とする要件として,当該条項が,民法1条2項に規定する基本原則,すなわち信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであることをも定めるところ,当該条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは,消費者契約法の趣旨,目的(同法1条参照)に照らし,当該条項の性質,契約が成立するに至った経緯,消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断されるべきである。

更新料条項についてみると,更新料が,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有することは,前記(1)に説示したとおりであり,更新料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできない。

また,一定の地域において,期間満了の際,賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや,従前,裁判上の和解手続等においても,更新料条項は公序良俗に反するなどとして,これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことは裁判所に顕著であることからすると,更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され,賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に,賃借人と賃貸人との間に,更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について,看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。

そうすると,賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当である。

(3)
これを本件についてみると,前記認定事実によれば,本件条項は本件契約書に一義的かつ明確に記載されているところ,その内容は,更新料の額を賃料の2か月分とし,本件賃貸借契約が更新される期間を1年間とするものであって,上記特段の事情が存するとはいえず,これを消費者契約法10条により無効とすることはできない。また,これまで説示したところによれば,本件条項を,借地借家法30条にいう同法第3章第1節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものということもできない。


以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法があり,論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。なお,上告人は,被上告人Xの定額補修分担金の返還請求に関する部分についても,上告受理の申立てをしたが,その理由を記載した書面を提出しない。

第3 結論
以上説示したところによれば,原判決中,被上告人Xの定額補修分担金の返還請求に関する部分を除く部分は破棄を免れない。
そして,前記認定事実及び前記第2の4に説示したところによれば,更新料の返還を求める被上告人Xの請求は理由がないから,これを棄却すべきであり,また,未払更新料7万6000円及びこれに対する催告後である平成19年9月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める上告人の請求には理由があるから,これを認容すべきである。なお,被上告人Xの定額補修分担金の返還請求に関する部分についての上告は却下することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 古田佑紀 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官 千葉勝美)

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