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賃貸物件がもたらすオーナーのリスク①

2001年9月1日、それは東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビルで起きました。3階のエレベーターホールから上がった火の手は、あっという間に4階まで広がり、44名もの犠牲者を出したのです。3階にいた中で3人だけ非常口や窓から屋根伝いに脱出して助かりましたが、この人たちは皆、客を避難誘導すべき従業員だったという話です。
この事故により、ビル所有会社の実質的オーナーと社長ら4人の計5人に禁固3年、執行猶予5年の有罪判決が下されました。また、借主のテナント店長1人に禁固2年、執行猶予4年が下されました。執行猶予がついた理由として、約8億4000万円もの和解金や見舞金が支払われたことも考慮されている、と報道されています。

日本人なら誰でも記憶に残るショッキングな事故ですが、これは賃貸物件を貸しているオーナーが、等しく負っているリスクでもあります。
もちろん、商業ビルと住居系のアパート・マンションとは、その危険度は違うのは言うまでもありませんが、負っているリスクの内容に違いはありません。
今回は、賃貸経営のオーナーが抱えるリスクを知り、どのように回避するかを考えたいと思います。

建物内で起こる火災のリスク

まず、建物・施設内で誰かが、身体的や財産的な損害を被る可能性について考えたいと思います。
私たちは、いつでもどこでも、100%安全ということはありません。
道路を歩いていても車が突っ込んでくるかもしれませんし、ゴルフをしていても雷にうたれるかもしれません。ただ、そのような場合、本人(あるいは遺族)は安全運転を怠った運転手や、安全な場所に避難させなかったゴルフ場を訴えるかもしれません。
自分が住んでいる(借りている)賃貸物件でそれが起これば、当然のように、オーナーと管理会社を訴えます。
なので私たちは、建物や敷地内にいる個人に対して起こるであろう事故の芽を、できる限り詰め取っておく必要があります。

まずは火災のリスクについて。
前述の雑居ビルほどの危険度ではなくても、アパートや賃貸マンションにも、火災による逃げ遅れの被害はあり得ます。
火災そのものは防げないかもしれませんが、被害を拡大させない、中にいる人の逃げ道を確保する、ことが大切で、そのための消防施設が備わっているわけです。
そしてその設備の定期点検や交換・補充の義務が法律で定められているのは、ご存じの通りです。 賃貸物件のオーナーとして、それらの法定点検を実施することは最低限の義務となります。
新宿の雑居ビルにも自動火災報知器は設置されていましたが、誤作動が多いために電源を切られていました。また、4階は天井を火災報知器ごと内装材で覆い隠してしまっていました。
さらに、酒瓶やおしぼりなどで階段が塞がれていたため防火扉が作動しなかった、という事態が、4階まで被害が広がった原因となっています(4階の犠牲者は28人で3階より多い)。
その点を、何度か東京消防庁から警告されていたのですが守られなかったので、消防法違反、業務上過失致死の疑いで逮捕され有罪となりました。
これを教訓として、私たちは必要な措置は講じておくべきです。
初期消火で、真っ先に活用されるのは「消火器」ですが、共用部分の通路に「歩行距離20m以下おきに配置」と義務づけられています。その耐用年数は8年です。

新品を購入する場合でも価格は、
ABC粉末消火器10型3,980円
消火器格納箱3,180円
(インターネット調べ、この単価は、平成21年2月現在のものです。)
となっていますので、それほど高価なものではありません。ただし、「悪質な消火器点検業者」の手口には気をつけてください。
消火器以外にも「火災警報機」の設置が義務づけられました。

設置場所は、台所、居室、2階建ての場合は階段室などです。
1個、4000円~5000円で取り付けられます。
RCや鉄骨の賃貸マンションの場合は、「消火設備」の他にも、警報設備(自動火災報知器等)や避難設備(避難はしご等)など、設備の量も質も増えてきます。
消防設備等の点検報告は、マンションの場合は3年ごとと決められています。まず点検と報告をルール通りにしっかり行っておくことが、私たちの最も重要で基本となるリスク回避策となります。

建物内で起こる犯罪のリスク

賃貸物件で起こる犯罪で最も多いのは侵入盗です。
入居者が室内で盗難に遭うということは、財産を奪われる損失と、運が悪ければ襲われる危険性があります。
そしてもちろん、泥棒に狙われやすい賃貸物件は入居者が不安になりますから、退去者が続出したり空室が埋まらなくなることも考えられます。
これが、オーナーが被る二次的なリスクとなります。一時的には、オーナーがしっかりとした防犯対策を講じなかったという理由で、被害者から損害賠償を請求される可能性があります。
この犯罪を防ぐには、「泥棒から見て、その建物がどのように映るのか?」という視点で考えることが大切と、専門家は言います。
では、泥棒に狙われやすい賃貸物件とは、

・だらしない外観
集合ポストにチラシ等が溢れている、自転車が乱雑に置かれてる、不要物が建物の周りなどに放置されている等。
これでは、空室を内見しにきたお客様からも嫌われてしまいますが、泥棒から見ると、色々なことに無頓着なオーナーと入居者、と映るのか、自分の仕事の対象にしやすいのです。
空室対策としても重要なことですが、いつも整理整頓されている、オーナーは賃貸物件について気を遣っている、という印象を、泥棒に与えることが大切です。

・死角になりやすい建物
道路との境界が塀や樹木で覆われていると、泥棒にとっては安心して作業ができる空間を与えることになります。バルコニーも、身を屈めれば外から見えない材質は、泥棒から歓迎されます。
入居者のプライバシーを重視すると、泥棒にとって好都合な条件を与える、という皮肉な結果になったりします。なるべく隠れることができるスペースを無くしたり、明かりを照らしたりして、泥棒に断念させることが肝心です。
では、防犯設備として効果的なものは何でしょうか。
これにはコストとのバランスを考えなければなりません。
賃貸収入が減り続けているときに、バランスを欠いた出費は現実的ではないからです。
専門家の著書などを読むと、次のようなローコスト防犯を勧めています。
・共用部分での防犯対策は、実質的な効果が期待できない上にコストが高い
・各戸の玄関に2種類以上の異なる種類(ここが重要)の錠を取り付ける。つまり「ワンドアツーロック」の採用で、出来れば、現状のシリンダー+鍵穴のない電子錠のような組み合わせがベスト。
2つの錠が無理であれば、CPマークのついてる、ピッキング対策に優れた錠に変える方法もあります。
※CPマークとは、「侵入に5分以上かかれば7割の窃盗被疑者があきらめる」との調査結果に基づいて、官民合同会議が定めた防犯性能試験に合格したことを示すものです。あらゆる状況で5分以上の侵入を防ぐ性能を保証するものではありません。
・1階の居室(構造上登りやすい建物は2階も)の、掃き出し窓には、防犯フィルムを全面に張る。
・要所要所に防犯カメラを設置する。

これで防犯効果はかなり高まる、としています。これなら、それほどの費用はかからないでしょう。
犯罪と言えば、玄関の鍵を盗まれたことにより、室内に侵入されて起こるものもあります。これは「盗み」を目的とした侵入盗と違い、入居者に対し特定の意志を持って入り込みますので、最悪は殺害などの凶悪な犯罪に発展する可能性のある、怖い犯罪です。
件数こそは盗難と比べものになりませんが、もし起これば、オーナーに与える被害も尋常では済まされなくなります。
私たちに防ぐ手立ては多くありませんが、もしその鍵が、私たちの不注意で他人に渡ったとすると大変です。なので、入居している部屋の、鍵の管理を厳重にすることが第一です。金庫など、他人が手に触れることができないように保管しましょう。また、部屋番号などが特定できないように気を配りましょう。
あるいは、「鍵は預からない」という考えも方もあります。
「部屋は貸しているとはいえ自分のもの」という考えがオーナーにはありますから、鍵を全部渡すことに抵抗感があるのが普通です。
また、必要な時に(消防設備点検など)鍵がないのは不便だ、という現実的な理由もあります。ただし、入居中の鍵が必要になることは実は希なので、万一の時は鍵屋さんを呼んでも対応できたりします。
このあたりはリスクと秤にかけて判断すればよいと思います。

転落事故のリスク

今年(2010年)の10月10日に、マンション内の転落事故のニュースが流れました。神戸市中央区の7階建て賃貸マンション天窓から、小学校6年の児童が転落して死亡したという、痛ましい事故のニュースです。
マンションの屋上にある明かり取り用のガラスの上に乗って、近所の児童が遊んでいた時に起こった惨事です。
問題は、オートロック付きの賃貸マンションに、居住者でない児童達が、屋上に登って遊べるという管理状態です。そして、子供の体重で割れる強度のガラスの周りに、子供でも簡単に乗り越えられる柵しかない、ということへの管理者責任でしょう。
この事件が、オーナーや管理会社の責任を問うところまで発展しているかどうか、続報はないので分かりません。しかし、1階のエントランスが事故の現場となっていますので、居住者は日常的にそこを通らなければなりません。
恐らく、多くの家族が退去していくのではないでしょうか。
また、付近では有名なマンションになっているでしょうから(事件当日は何機ものヘリコプターが旋回したはずです)、噂はなかなか消えず、客付けにも長い間苦労するのではないでしょうか。
このような特殊な設計ではないとしても、共用廊下や非常用階段などに、「ちょっと手すりが低くて危ないな」と思わせる建物を見かけたりします。
たまたまビールケース等が置いてあって、丁度いい踏み台になるのも危険です。
転落のような大きな事故でなくても、雨の日に滑りやすい通路、というのも危険が隠れています。 用心に超したことはないので、施設内に危険の芽があるなら、少しでも摘み取った方がいいですね。

賃貸経営は有望で素晴らしい事業だと思います。衣食住の中でも生活の中心ですし、土地の有効利用という観点からも、これほど安定した需要に支えられている選択肢はないと思います。
ただ、安心して暮らせる生活の拠点を提供する事業なので、スペースを貸すだけの安易な感覚では危険が伴います。たまたまラッキーにも事故と鉢合わせしないで過ごせたとしても、いつリスクが現実化するか分かりません。
しっかりとしたリスクマネジメントを行ってこそ、有望な事業といえるのではないでしょうか。

次回は、今回の続きと、自然災害のリスク、オーナーの財政上のリスクなどを取り上げます。

 

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