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家賃債務保証業適正化法案 来春にも施行へ

政府は2月23日、深夜早朝の執拗(しつよう)な督促など悪質な家賃滞納の取り立てを規制し、賃借人を保護する新法案を閣議決定し、今国会に提出しました。

不況で収入を断たれ、家賃が滞る非正規労働者らが増える中、強引な家賃取り立てをめぐるトラブルが社会問題化しています。今国会で成立させ、来年6月末までの施行を目指します。
法案は、大家や管理会社、連帯保証業者が、滞納を理由に賃借人を脅迫して私生活の平穏を害する
▽住居の鍵を無断で取り換えて閉め出す
▽深夜や早朝に連続して訪問や電話で家賃を取り立てる
▽室内から勝手に家具や衣類を運び出す
などの行為を禁止しています。

違反すれば、2年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいは両方を科す、としています。
また、連帯保証業者や、賃借人の過去の滞納状況のデータベースを構築する業者に対し、国土交通相への登録や5年ごとの登録更新を義務づけます。違反には5年以下の懲役または1000万円以下の罰金、あるいは両方を科す、としています。
国交相はこれらの業者に対し、業務改善命令や業務停止命令を出すことができます。
国交省住宅総合整備課によると、家賃トラブルをめぐり、平成20年度に国や地方自治体などに寄せられた相談は78件でした。
内訳は、家賃支払いが滞った際に「執拗な督促がなされた」(27件)、「無断で鍵を交換された」(15件)、「無断で借家内に侵入された」(10件)、「高額な違約金を請求された」(10件)など。
また家賃保証会社について、全国の消費生活センターに寄せられた相談は2004年度の44件から2008年度には495件に急増。不況などで家賃を滞納する人が増えたためとみられています。

【解説】
今回の法案のうちオーナーにとって重要なのは、取立行為の規制の適用対象が、保証会社だけでなく、オーナーが依頼した管理会社やオーナー自身である、ということです。
法案は、家賃の取り立てに当たっては「面会、文書の送付、貼り紙、電話その他いかなる方法」を問わず、賃借人を脅迫するなど「私生活や業務の平穏を害するような言動をしてはならない」と明記しました。
鍵の交換や施錠ロックなどによる追い出し、衣類や家具、家電など家財道具の持ち出しと保管、正当理由のない深夜・早朝の訪問や電話による督促を禁止し、それらの予告をすることでさえ禁じています。
違反した場合には懲役2年以下または300万円以下の罰金で、特に悪質なケースは両方を科すこともできると、重い罰則を用意しました。
オーナーは今回の法律の内容を知らないと、家賃の取り立ての仕方によっては刑事上の罰則を課せられることになりますので注意が必要です。
なお、深夜・早朝の具体的な時間においてはこれから政・省令で定められることとなりますのでこの点も今後注意していく必要があります。

オーナー座談会 「家賃保証適正化法案について」

司会 本日は、2月23日に閣議決定された新法案について話し合いたいと思います。と言いますのは、この法案が、直接皆様に罰則という形で降りかかってくる恐れがあるからです。

Y 家賃滞納者とはいえ、悪質な取り立ては禁止すべきなのは分かります。でも、今回の法案を見ると、皮肉な言い方をすれば、「安心して滞納してください」と言っているようなものです。不動産会社も我々も、これでは怖くて家賃督促が出来なくなります。

K 家賃が約束通りに支払われれば督促をする必要がないわけですから、まず、滞納が発生しにくい、発生しても早期に解決できる法律制度があってしかるべきですよね。 現在の法制化では3ヶ月以上の滞納をもって始めて裁判などの法的措置に移れるし、その費用も莫大なので現実的ではありませんよ。
簡易裁判所で1~2ヶ月の間に判決が出るようにしてほしいですね。

D 家賃を2~3ヶ月滞納したら、即退去させられる法律があったらいいのに。

A 私たちも不動産会社も、この法案が通れば、新しい法律の基で行動するしかないわけですけど、法案では「威迫的な」という曖昧な表現を使っていますが、何をもって「威迫」と判断するのか、具体的な基準がほしいですね。

司会 新聞などの報道によりますと、国交省では次のように言っているようです。「この法律で規制するのは“貼り紙”ではなく、入居者に不安を与えるような“威迫”行為です。本来は郵便受けに手紙を差し入れるべきで、貼り紙は望ましいものではない。しかし、他の手段では連絡が取れないこともあり許容される状況もある。法案では一律に禁じているわけではない」と。

D へえー。 ならば、何度も手紙を出しても返事がない場合なら、貼り紙をしてもいい、ということですか。

司会 一概にそう判断するのは危険ですが・・・・。 早朝・深夜の定義などの詳細も、法案成立後に政・省令で定めるとされています。

A 実務的には判断が難しいですよね。ドア外側に紙が貼ってあることが尋常ではありませんから、それ自体が「威迫」とされるのか、貼ってある内容が脅迫的な場合は「威迫」と判断されるのか。

Y 僕も貼り紙をしたことはありますけど、開かなければ内容が見えないように配慮して、中身も「連絡をください」程度のものでした。これなら「威迫」ではないと思いますけどね。

A でも、入居者が「威迫と感じた」と訴えればね。あとは裁判官の判断ということになってしまう。K 払いたくても払えない人も最後は開き直ってきます。また最初から払う意志のない悪質な入居者もいます。その人たちにこの新法が悪用されないか、というのが不安ですね。家賃の踏み倒しに慣れている人たちにとっては、好条件となる法律ですよね。

司会 それ以外には、どんな問題がありそうですか。

Y 僕が家賃管理を頼んでいるうちの1社では、「今後は入居審査の基準を引き上げるしかない」と言ってました。収入が安定しない人には部屋を貸さない、という方針になりますが、それで果たしていいのでしょうか。

D それじゃ、ますます空き室が決まらなくなりますよね。収入の多い人ばかりが申し込んでくれれば楽ですけど、それらの方は新築に流れてしまいますから。

A 連帯保証業者が入居者の家賃履歴をデータベース化する、という話はどうなったんですか。悪質な入居者がブラックリストに載れば、多少は被害が防止できると思います。

司会 今年2月1日、連帯保証業者でつくる社団法人「全国賃貸保証業協会」が、入居者の信用情報を一括管理するデータベースを加盟13社で運用を始めました。
それにより、滞納3ケ月程度としている「悪質滞納者」を特定し、ブラックリスト化(以下DB)することで、「悪質滞納者」を締め出すことができます。
オーナーから見れば、「悪質な滞納を繰り返す入居者はお断り」と思われるかもしれません。ただ、住居探しに苦労する失業者・日雇労働者からは、DBに対して不安や懸念があり、さらに日本弁護士連合会などからは、批判の声が出ています。

Y 3ヶ月以上も支払いを怠った履歴をデータベースに残すのは当然だと思いますけど。

司会 そこで今回の法案では、連帯保証業者やデータベースを構築する業者に対し、国土交通相への登録や5年ごとの登録更新を義務づけます。違反には5年以下の懲役または1000万円以下の罰金、あるいは両方を科す、としています。登録も取り消されて業務を継続することができなくなります。

A 今回の騒動のきっかけは、一部の連帯保証業者の「行き過ぎた督促行為」が発端だから、新法の規制で行儀良くなってもらいたいですが、この法案の内容だと、まともな連帯保証業者さんも、督促の手を緩めたり、審査基準を厳しく対応する、ということは起こりそうですよね。

D 空き室対策から遠のきますね。K ひとつ質問ですが、連帯保証業者か管理会社が、「行き過ぎた督促」で訴えらたケースで、一緒にオーナーも損害賠償を命じられたと聞きましたが、本当ですか?

司会 その通りです。

K では、我々が直(じか)に行わなくても、依頼している業者さんが新法に違反すると、我々オーナーも同罪、ということになるのですか。

司会 そうではありません。
このケースは、ある一室が長期滞納していて、その解決を目的にオーナーさんが業者に依頼したのです。部屋も滞納者も特定して頼んでいるので、その業者が行った違法行為はオーナーも承知していた、と理解されたようです。
皆さんのように、募集や家賃集金も含めた総括的な管理を依頼しているのでしたら、このケースのようにならないと思います。

新法に向けて どうするべきか

司会 さて、問題はいろいろ出ましたが、まだ法律案の段階であり、これから国会の審議を経て正式に成立することとなりますので、まだまだその内容については修正される可能性はあります。でも、今国会で成立する可能性が高いのも事実です。
今後は、どのように対処されていきますか。何かお考えがありましたら、お聞かせください。

A 管理会社さんとよく話し合おうと思います。法案が出たからと言って、いきなりドタバタする訳ではないですし、現場でそれ程ひどい督促が行われているとは思いません。でも任せきりで良いとも思いません。空き室問題とも関係する話ですから、どのような考えで対処していくか、話し合った方がいいと思いました。

K 僕は自主管理を行っているので、初期の督促は業者さんにお願いしていますが、1ヶ月以上の滞納は自分で督促しています。今回の法案の内容を聞いてみますと、マメにコツコツと行うことが大事だと思いました。頻繁にかつソフトに連絡をとることが重要ですね。
それと、入居者さんとの日頃のお付き合いが大切だと思います。やはり情があれば、そんなに理不尽なことはお互いが出来ないと思います。

Y 業者から「定期借家権」の導入を勧められました。家賃滞納だけでなく、いろいろなメリットがあるようです。これも検討課題かな、と思っています。

D 定期借家権だと、部屋が決まりにくい、という話を聞きましたよ。入居者にとっては一定期間しか住めないから嫌われるとか。

A それに、手続きが面倒ともいいますね。

K 定期借家権のいろいろなメリットとは、どんなものですか?

Y 基本的には、再契約を前提とした定期借家権とします。
なので、一定期間しか住めない、という入居者の不満は解消するのではないかと思います。
そして、例えば3ヶ月以上連続して家賃滞納したり、通算で3回以上の家賃滞納があった場合は再契約に応じない、というような特約を設けます。

K そうすることによって滞納する入居者は、契約満了時には退去させることができるわけですか。

D でも、契約期間は2年間あるので、入居してすぐに滞納が始まったら、定期借家権の効果はないですね。

Y 最初の契約期間は1年間などの短期にします。その間に問題がなければ、次の期間は3年に延ばしてもいいのです。

K お互いに信頼関係が希薄な当初の契約は短期間にしておいて、合意実績を重ねるにつれ長期化していく、ということですね。

D 入居者が面倒に感じそうですね。不動産会社の店頭で説明した時点で、「その物件はいいです」と言われてしまいそう。

A それに、短期間での契約手続きをしなければいけないので、事務手続きも煩雑になりますね。

Y 確かにそうですね。なので入居者さんにもメリットを説明しないといけないと思います。
最初の短期間での再契約時には再契約料(更新料に相当する)は徴収しない、とか。その他の共同生活ルールにも適用されるので、騒音や無断放置を繰り返す悪質入居者は排除できるので、住みやすい環境になる、とか、です。
定期借家制度による賃貸借契約は、借主さんにとってもメリットがあるんだ、ということを理解して貰わないといけないので、募集する業者さんと我々の理解が重要になりますね。

司会 定期借家制度は成立して10年が経ちますが、あまり普及していないのが現状です。理由は色々とあるでしょうが、皆さんが言われた懸念材料が原因となっているのも確かです。
しかし、成功事例も多く報告されています。
滞納が増えても督促行為が思うようにできない、とか。合意したはずの更新料や原状回復負担分を返還せよ、とか。
現在のオーナーが抱えている問題を解決できる糸口は、確かに定期借家権にはあるようです。業界新聞にも、最近特集されることが多くなりました。

A 定期借家権には滞納督促以外にもメリットがあるということでしたが、他にはどんなことがありますか。

Y いま騒がれている「更新料」の問題は、定期借家権なら更新ではなく再契約です。
我々オーナーが1ヶ月分を徴収するにしても、更新料ではなく再契約料となります。普通借家契約では法定更新があるので、借主は更新料を支払わなくても住み続けられますが、定期借家権では契約が終了して再契約ですから、再契約料の支払いで合意しなければ住み続けることが出来ません。つまり再契約が行われないわけです。
まったく合意して支払っていますから、後で返せと言っても、消費者契約法での違法とはならないと思います。
もしこれが認められないなら、礼金も同じことになってしまいますから。

Y 一番の問題は、戦時中の1941年に導入された「正当事由制度」が、いまだに普通借家権で存続していることだと思います。
借主が弱者で貸主は強者という構図で成り立っている制度なんですね。いまや我々は、決して強者ではないのですが。
だから、「正当事由制度」から逃れるには定期借家権しかないのではないか、と思います。

K 確かに。「正当事由制度」に影響されない契約方法は定期借家しかありませんからね。
面倒だなんて言っていると何も解決しないし、導入を検討してもいいかもしれません。

司会 本日は、有り難うございました。

 

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