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オーナー座談会「なぜ事業計画書なのか」

司会 前回の座談会でDさんが「収益計画書」のお話をされました。もう少し詳しく説明してください。

D 実は以前「ある出来事」があって、それがキッカケで思い立ちました。

司会 その出来事とは?

D 僕の物件は自分の土地を活用したもので、借入れも建築費だけです。
でも、ひとつだけ土地を購入して建物を建てた物件があり、自己資金ゼロで全額を借り入れました。
それで大変な想いをしたのです(笑)

Y なぜ地主のDさんが土地から購入を?しかも「大変な想い」とは?

D 銀行に勧められたのが大きな理由です。
分かりやすくするために大まかな数字で説明しますね。
まず、土地と建物で約1億円の投資です。借入金の返済期間は20年で金利は2%という条件。
表面利回りは10%の計画です。建物の完成から募集も順調に進み、初年度の収益は表のようになりました。
発生したロス(空室)は5%。

家賃収入  950万円
運営費  130万円
負債返済額  600万円
差し引きキャッシュ  220万円

これを基に10年間の計画を立てました。最初の5年間は、ほぼ同じ数字で推移して、6年目から10年目までの5年間は家賃収入は850万円となりました。支出は同じなので、キャッシュは120万円が残る予算です。表をご覧ください。

家賃収入  850万円
運営費  130万円
負債返済額  600万円
差し引きキャッシュ  120万円

10年間のキャッシュは累計で1700万円になります。

220万円×5年=1100万円
120万円×5年=600万円
合計1700万円

Y 「自己資金ゼロ・全額借入れ」なら良い数字じゃないですか。
これで何が「大変な想い」になったのですか。
予想したより家賃が下がったり空室が発生したとか?

D いえ、ほぼ予定通りの家賃収入が確保できたのですが、「税引き後のキャッシュ」が予想と違ったのです。
先ほどのシミュレーションは、単純に現金の出入りを計算したもので、どこも間違ってはいないのです。
ところが税金のための所得計算は違うのですね。
初年度の所得計算はこのようになりました。

家賃収入  950万円
運営費  130万円
借入金利息  200万円
減価償却(建物)  240万円
減価償却(付属設備)  200万円
差し引き課税所得  180万円

T この課税所得180万円に対して所得税などが課税されるワケですね。
手元に残ったキャッシュ220万円より課税所得が少ないなら良いのではないですか?

D ところが、この2つの数字は大逆転するんです。
10年目の所得計算はこうなりました。

家賃収入  850万円
運営費  130万円
借入金利息  115万円
減価償却(建物)  240万円
減価償却(付属設備)   25万円
差し引き課税所得  340万円

T あれ?10年目のキャッシュの手残り額は120万円だったのに、課税所得は340万円になって、数字が逆転してますね。

D この税金を支払うとキャッシュの手のこりは、わずか40万円になりました。

T たった40万円?なぜこんな計算に?

D 所得計算では、実際の現金の出入りと違って、必要経費となる「借入金利息」と「付属設備の減価償却」が毎年減っていくのです。

A 借入金の返済が進むにつれて、当然に利息分は減っていくんですよね。
減価償却も、平成10年4月1日以後に取得した建物は定額法と定められていますが、付属設備の方は定率法を選択するはずですから、減価償却額も毎年減っていく。

D そうです。賃貸経営の必要経費で大きいのは利息と減価償却ですが、このふたつは、現金支出に変化がないのに、年々減っていくのです。
結果として課税所得が増えて所得税が上がってしまう。このままでいくと、13年目くらいには手残りがマイナスになりそうです。
僕は、他の物件のキャッシュを回せるので大丈夫ですが、この物件だけを全額借入れで所有しいたらと考えたらゾッとします。

Y それが「大変な想い」ですか・・・

D そうです。僕が始めた「事業計画書」はこの経験が出発点なのです。
実際のキャッシュフロー計算(現金の手残り)と、税額を知るための所得計算をして、そして税引き後のキャッシュフローを知る・・・。
これを5年から10年くらいのスパンで予算を作成しています。

A うん。分かりやすいですね。

D さらに、ここに修繕計画も入れ込みます。築年が10年を超えてくると大規模な修繕が必要になってきますよね。
大規模修繕なんて、やらなくて済むならやりたくありませんが、やらなければ緊急事態で余計な出費を強いられることになるかもしれませんし、入居者さんからの支持を失って賃料収入を減らすことになるかもしれない。
何棟もの賃貸建物を運営して思ったのは、計画的な修繕をした方が、結果的にコストを抑えられるし、入居状況もよくなる、ということです。
これらも事業計画書に入れることによって、必要な準備が可能となるので、それによってバランスの取れた経営をしていきたいのです。

Y たしかに・・・。計画が作成されていないと、入退去や様々な修繕といった日々の賃貸運営が場当たり的になりますね。

T 賃貸事業が順調なのかを判断することも難しくなってしまいます。空室対策にしても、家賃を下げて募集すればいいか、費用をかけて対応するべきか、予算が出来ていれば判断の助けになりますね。

Y 僕なんて、家賃収入を昨年と比較して一喜一憂してる程度です。

A Dさん、事業計画書を作るためには、色々な数字を知っていなければならないでしょ。
どんな数字を把握すべきですか?

D そうですね。「賃料等の収入」「修繕・税金等の経費」「ローン返済の利息と元金」「大規模修繕等の必要経費と資本的支出」「減価償却(定額と定率)」「所得税と住民税」「売却価格)」のような数字ですが、税理士さんに聞けば分かりますよ。

T 売却価格まで?

D 僕らは地主オーナーなので物件を売ることはありませんが、常に自分の不動産の価値は意識すべきだと思います。
相続した財産の価値を下げたくありませんからね。

司会 最後に、事業計画書を作成するメリットを整理してください。

D まず、賃貸経営の判断が計画書があると容易になると思います。
経営の目的達成度合いが分かりますしね。
それに、税引き後のキャッシュフローの予定が分かるので、キャッシュ不足の発生を事前に把握して準備ができます。
修繕計画も入れ込むことによって、計画的な修繕でコストを抑えられますし、将来の収支の予測と修正ができると思います。
まだまだ「完ぺき」にはほど遠いのですが、頑張って続けていこうと思います。

司会 有り難うございました。

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