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アパートの外廊下の崩落事故 ~貸主のリスクを考える~

賃貸住宅のオーナーにとっては他人事ではないかもしれません。

北海道苫小牧市の賃貸アパートで外廊下の床が崩落し、
家族5人が転落し病院に搬送される事故がありました。

NHKなどによると事故が起きたのは
今年10月17日の夕方で、
2階建てアパートの2階部分が現場となりました。
搬送された5人の命に別状がなかったのは不幸中の幸いでした。

報道では事故が起きた外廊下は
金属製で老朽化が進んでいたことから、
今年8月にオーナーに修繕するよう連絡していたと
物件の管理会社が証言しています。

オーナーは今後、
怪我をした入居者への補償問題がでてくると考えられます。
このように建物の不備によって入居者が怪我をした場合には、
その建物の所有者が損害賠償責任を負います。

今回の事例では、入居者の使用方法に
問題があったとは考えにくい上に、
管理会社は廊下の改修を促していたと報道されており、
事実ならばオーナーの責任は免れないのではないでしょうか。

賃貸経営でおきるのは、
このような老朽化による事故だけではありません。

大規模災害時にも賃貸住宅オーナーの責任が
追及された事例があります。

1995年に発生した阪神大震災で、
地震によって倒壊した賃貸住宅のオーナーが、
亡くなった入居者の遺族らから責任を問われました。

神戸市東灘区にあった「東神マンション」は、
1階部分が完全に押しつぶされて倒壊し、
一人暮らしの学生など4名が犠牲となりました。

また、亡くなった学生の遺族らとともに、
倒壊による生き埋めで大きな怪我を負った入居者も
法廷でオーナーの責任を追及しました。

神戸地裁の判決では、
建物が当然持っているべき安全性を欠いており、
「賃借人らの死傷は、
地震という不可抗力によるものとはいえず、
当該建物自体の設置の瑕疵と
想定外の揺れの本件地震とが、
競合してその原因となった」(判決文)
と判断しました。

裁判所は慰謝料のほかに、死亡による逸失利益、
葬儀費用の合計金額の半分にあたる1億5千万円の支払いを、
オーナーと建築業者に命じました。

巨大災害では、
多くのことが「想定外」として責任が曖昧になりがちです。

その中で、
オーナーの責任を問うたこの判決は
当時の不動産業界紙などでも大きく取り上げられたため
ご記憶の方も多いかもしれません。

判決では、建物が老朽化しているだけでなく、
建築状態が悪く、設計・施工ともに
いい加減な状態であったと認定しています。

また、周辺で倒壊した建物は
このマンションだけだったことや、
高い建築知識を持つ遺族が震災後
すぐに現地で写真撮影や周辺への聞き込み調査
などを実行しており、
豊富な証拠が残されていたことがこの判決に
つながったと言われています。

集合住宅に関わる事故は多く発生しています。
なかでも多いのは「滑る、転ぶ、落ちる」といった事故です。

人口動態統計(厚生労働省)では
マンションを含む建物内やその周辺で、
滑る、転ぶ、落ちることが原因で亡くなった方は
年間3614人(2017年)にも及びます。

住宅火災による死者が889人(総務省 同年)といいますから、
比べれば日常的な事故がいかに多いかわかります。

共有廊下が水浸しで滑った、
階段の滑り止めが壊れていて躓いた、
子どもが手すりをくぐって落下したなど、
例を挙げればキリがありません。

安全な建物を提供するのは貸主の義務ですが、
あまりに多い事故に対処するために
「施設賠償保険」をすすめる声があります。

施設賠償保険は建物等の施設の管理の不備や、
構造上の欠陥が原因で怪我や死亡事故が起きた際に、
オーナーが負う法的責任によって生じる損害を補償する保険です。

火災保険のなかには施設賠償特約が
付帯できるものもあるようです。
ひとたび事故が起きれば、
補償はとても高額になることもあります。
こうした保険も含めて対策を考えていきたいところです。

まとめ
①建物老朽化などで起きた事故は所有者責任を問われる可能性があります。

②地震など大規模災害であっても所有者に賠償命令が下った例もあります。

この記事は当社のオーナー向けニュースレター2020年12月号に掲載されたものです。

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