質問
「賃貸住宅管理業法」という法律が
2020年6月に成立したと聞きました。
私たち大家にも関係がありそうな名称ですが
どんな内容なのでしょうか?
なぜいま作られる必要があるのでしょうか︖
私たちが特に注目すべき項目がありますでしょうか?
回答
この「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」
(賃貸住宅管理業法)は
「大家さんを保護するための法律」
と言っても過言ではありません。
そもそも管理業務は入居者の斡旋を任されていた
不動産業者が無料で行うところから始まり、
やがて昭和50年~60年の間に
「有償サービス」と変化してきました。
これまでに明確なルールが確立されてきた訳ではありません。
故にそれを行う業者も玉石混交と言われます。
もし「不慣れな管理業務」を行う業者であれば、
それは大家さんと入居者の不利益となってしまいます。
業界の質向上を目指して平成初めには
協会も設立されて情報共有や教育も進みましたが
「法律で規制されていない」という現実に限界はあるようです。
そこで管理業務のルールを適正化して取り締まる目的で
本法律が成立したという次第です。
規制される側としては「やっかいな部分」
があるのは事実ですが、
私たちが目指す「大家さんの賃貸経営に役立つ賃貸管理」
が標準となるためには必要な法律だと考えています。
この法律は、
「賃貸住宅管理業者の登録」と
「サブリース契約の適正化」
の2本立てになっています。
サブリースに関しては
次の機会で説明させていただきますので、
今回は「管理業者の登録」と、
それが大家さんに与える利益についてのご質問に回答いたします。
現在は管理業務を行うのに登録の必要はなく、
誰でもこの業務を開始することが可能です。
仮に管理業務の経験がゼロでも請け負うことができるのです。
そこで平成23 には
賃貸住宅管理業者登録制度がスタートしていますが、
登録は任意でした。
それが本法律で義務となります。
登録をせずに管理業をすると
1年以下の懲役・100 万円以下の罰金となります。
本法律が登録業者に義務づけている重要な項目は4つあります。
1.業務管理者の配置
大家さんに役立つ管理業務を行うには
経験と知識が必要になりますので、
営業所ごとに1人以上の
「業務管理者」の配置が義務づけられます。
管理者の条件としては、賃貸不動産経営管理士
又は一定の講習を修了した宅地建物取引士、
などが想定されているようです。
その影響もあってか管理会社の中にも、
賃貸不動産経営管理士の資格取得を
奨励する動きがおきています。
この資格は現在は民間レベルですが
将来的には国家資格となると言われています。
2.管理受託契約締結前の重要事項の説明
大家さんが管理を依頼するか決断するために
必要な項目を事前に説明することが義務づけられます。
この説明を受けることで大家さんは、
質問、交渉、契約締結の再検討などができる機会を得られます。
3.財産の分別管理
昭和60年代や平成初期の賃貸借契約では
多額の敷金や保証金を貸主が預かっていましたが、
それを管理会社が保管することも多く行われていました。
最近では敷金ゼロも増えており以前ほどではありませんが、
もし管理会社の経営が行き詰まると
返却不能という事態が起こり得ます。
過去にはそのような事故もありました。
それを避けるために会社の資産と預かり分を
分けて管理することが義務づけられました。
4.定期報告
大家さんへの賃料入金状況や建物維持管理報告は
すでに行われているところですが、
具体的にどのような報告義務が規定されるかは
国土交通省令で定められることになっています。
さて、以上の内容を確認したところで
「これで本当に管理業務の質が向上するのか︕︖」
と疑問視される方もいるかもしれません。
このような法律は施行後に
徐々に規制が強化されることがあります。
たとえば「登録義務」が「免許制」に変わるとか、
業務管理者の資格要件が厳しくなるとか、
定期報告の義務内容が強化される、などです。
まず管理業務を規制する法律が作られた、
というところに大きな意義があるのではないかと思います。
2021年の6月から施行される予定と言われています。
施行後はインターネットで
業者の登録内容が一般で閲覧できると思われます。
一度、覗いてみてはいかがでしょうか。