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空室対策は「部屋を埋めること」ではない︕︖

質問
前回、親から相続した賃貸物件の
今後の経営目標について教えていただきました。
その内容は、
①得られる家賃収入から取り逃がしている「機会損失」を減らすこと。
②家賃収入を上げる努力をすること。
③売上高でなく収益を目標において必要な費用をかけること、
と理解しました。
これらについて考えてみると、どれも「空室対策」への取り組み姿勢が
重要だと感じた次第です。
漠然とした質問ですが「空室対策」についての考え方を教えてください。

回答
空室対策とは「ただ部屋を埋めるのでは」なく、
収益の確保が第一、と考えることが大事です。

もし空室対策を「部屋を埋めること」と理解するなら答えは簡単で、
家賃を下げればいいのです。

家賃を下げれば、ほとんどの空室は埋まるでしょう。
もちろん、それも有効な方法の一つではあります。

しかし下げ続けていたら、
それで埋まっても収入が減ってしまいますね。
収益も減ります。
赤字になるかもしれません。

「空いているよりいい」、
という意見もあるかもしれませんが賛成はできません。

募集家賃を下げ続けたら、他の部屋の家賃も下がりますし、
入居者さんの質も下がります。

大家さんは必要な投資ができないので
老朽化に拍車がかかります。

当然に不動産の価値が下落します。

最後は土地代にもならない不良物件になるかもしれない。
そんな物件を相続したら大変ですよね。

質問者さんのお父様は、
しっかりと経営されていたと思われますので幸運ですね。

従って、あるべき空室対策とは、
「収益を第一に見据えながら部屋を埋める策を考える」
ことと言えます。

適正な査定家賃を知っているか

もう少し具体的に説明しましょう。

空室対策のスタートは
正確な家賃査定を知るところから始まります。

正確な家賃査定とは、
「その条件で3ヶ月以内に決まる」ということです
(3ヶ月では短いとか長いというご意見もあるでしょう)。

査定とは、築年、構造、間取、設備、立地など、
多くの項目から導かれます。

流行りのAIにデータを入れれば正確に算出できるでしょうが、
その地域で多くの募集物件を
お客様に紹介してきた不動産会社のスタッフなら、
正確な査定ができるはずです。

この適正査定を知ることが、空室対策の出発点になります。

つぎは、その応用編です。

「その条件で3ヶ月以内に決まる」なら、
適正家賃のまま募集するのもよいと思いますが、
同じような条件のライバル物件が、
たまたま同じ地域で多く募集されていると、
決めるのに時間がかかることになります。

そこで少し特徴を出すために、
エアコンなど10万円の投資をしてみます。

いまどきエアコン付きは珍しくありませんが、
「全部屋にエアコンつき」となれば、
ひとつのキャッチフレーズになります。

これで、家賃を少し上げられるかもしれません。

あるいは、家賃は据え置きの代わりに、
3ヶ月より早く決めることができるかもしれません。

これが適正に査定された家賃の応用の一つです。

投資するか、サービスするか

さらに、もし築年数が10 年15 年という、
設備の耐用年数の節目なら、思い切って新しくする、
という大きな投資も検討できます。

例えば30年というスパンで経営を考えたとき、
どこかで設備を替える必要があるなら、
「今が替えどき」というタイミングがあるからです。

高額の費用をかけてリノベーションを行うのも、
このようなタイミングです。

一方で投資はせずに、
「最初の〇ヶ月は家賃を無料」とか、
「仲介手数料、保証料、火災保険料、日割り家賃などの
 入居時費用をゼロにする(つまり大家さんが負担する)」、
という募集条件をとることもできます
(この場合は少し家賃を高く設定できます)。

この2つの方法は、
「建物に投資して価値を高めて査定家賃を押し上げる」
という考えと、
「投資はしないが、
 借りやすいサービスを付けることで早く決める」
という考えの違いで、
どちらも間違ってはいませんね。

これは、空室対策の戦略の違いであり、
大家さんの賃貸経営に対する考え方の違いなのですが、
適正査定家賃がベースとなっている根っこは同じです。

そして、どちらにも大事なのは、
「結果として収益はどうか」という視点で絶えず考えることです。

それを、短い単年度ではなく、複数の年度でみていくことが大事です。

まとめますと、
空室対策の定義は部屋を埋めるだけではなく、
収益を第一に見据えながら決定していく。

そして、正確な家賃査定を知ることが出発点であり、
その適正家賃をベースに、
大小の投資をすることで物件の価値と家賃を引き上げる、
あるいは借りやすいサービスを付加することで短い期間で決めていく、

などのいろいろな戦略がある、ということになります。

この記事は当社のオーナー向けニュースレター1月号に掲載されたものです。

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