マイナンバーと健康保険証の一体化による
トラブルが全国で発生していて、
我が国のデジタル化の遅れが指摘されていますが、
この流れが止まることはないでしょう。
そして、このデジタル化の波は不動産にも及んでいます。
それが、土地・建物のマイナンバーとも言える「不動産ID」です。
不動産IDは17桁の番号で構成
「不動産ID」とは、
土地や建物を特定するための番号です。
すでに土地と建物には「不動産番号」という
13桁のコードが付けられています。
(登記簿の表題部に記載されている)
それに4桁の特定コードを付け足して
17桁の不動産IDとなります。
オーナー様のアパートや賃貸マンションの場合は、
建物の不動産番号(家屋番号ではない)に、
特定コードとして「部屋番号」が付け足されることになります。
201号室なら「0201」が
不動産番号にプラスされることになるわけです。
つまり部屋ごとに不動産IDが付くことになりますね。
なぜ、不動産IDが求められるのか?
不動産に共通の番号が付くと何が変わるのでしょうか?
マイナンバーの場合は、
住民登録や免許証や健康保険など、
バラバラに登録されている個人情報が紐づくことで、
様々な行政サービスが受けられるようになる、とされています。
同様に、不動産に関する情報を扱う機関もバラバラで、
国交省、法務局、市区町村の都市計画課、
土木課、道路管理課、建築審査課、開発指導課、
防災課、環境保全課、資産税課、水道局、
電力会社、各自治会など、
両手に余る数になります。
もし、売買や建築などの理由で不動産を調査するときは、
それぞれの機関を回らなければなりません。
たとえば、土地活用の目的で調査をするとき、
土地には「地番」と「住居表示」という
異なる標識が存在していて特定に時間を要したり、
水道やガス、下水というインフラの整備状況の調査にも、
下水道は市区町村、ガスは民間会社など、
別々に調べなければなりません。
もし複数の会社に土地活用の提案を依頼したときは、
得られる情報の結果は同じですが、
各社が同じような、無駄とも言える手間をかけることになります。
この労働生産性の低さは、
最後には発注側へのコストとして跳ね返っているかもしれません。
不動産に共通の番号が付いて、
どこかで一元に誰でも確認できるようになることは、
大きなメリットと言えるでしょう。
不動産IDは、
2022年3月31日にルールを定めてガイドラインが発表されました。
そのガイドラインによると不動産IDは、
「不動産業界の生産性と、消費者利便の向上を図り、
不動産の取引と活用を促進する」
「デジタル社会を迎えるにあたり、
不動産 DX を推進する情報基盤整備を担うことにより、
不動産市場の活性化と透明化を図る」
と説明されています。
では、消費者利便の向上とは、どんなメリットが想定されているのでしょうか?
オーナーと消費者のメリットは?
たとえば、建物の情報を共有することで、
宅配サービスがさらにきめ細かくなることが期待されます。
不動産情報が一カ所で容易に得られるため、
その不動産の価値をより正確に評価できるようになるので、
たとえ古くても手入れされた建物は
適正な価格で取引されるようになります。
不動産の所有権移転などの手続きも、
不動産IDを利用して行えるので手続きが簡素化されます。
不動産オーナーも、
ご自身の不動産情報を一元管理することができるので、
建物の修繕履歴や融資実績などを、
ひとつの情報ソースで確認することができるようになるでしょう。
これは不動産オーナーにとって間接的なことですが、
募集情報を掲載しているポータルサイトへの重複掲載が、
不動産IDによる紐づけによって判別しやすくなります。
重複が無くなれば、
「架空の物件情報が掲載される(いわゆるオトリ物件)」
「同じ物件の情報が複数掲載されて分かりにくい」
といったことが減少して、
部屋探しする利用者の利便性が向上します。
この不動産IDは、
利便性が高まる不動産業者のメリットが目立ちますが、
不動産オーナーも含めた消費者も、
複雑に管理されていた情報が一元化されて、
それを誰でも簡単に見ることができるようになるならば、
そのメリットは小さくないと思います。
ただし、マイナンバーのように、
理想を実現するには紆余曲折があることでしょう。
それぞれの不動産情報を持っている役所やガスなどの民間会社、
そして個別に情報を抱えている不動産会社などの情報が、
どのように一元化されるかについては、
まだイメージできていません。
そのメリットを現実に感じられる日が早くきてほしいところです。