■質問
前回の解説で、
「適正賃料を正確に把握することが出発点」というお話しがありましたが、それ知る方法について教えてください。
■回答
適正賃料は賃料査定によって知ることができます。
これは不動産会社がオーナー様に対し、
「その物件の賃料はいくらで貸し出せるか」
を提案するものですが、
示された査定額が、そのまま募集賃料となるわけではありません。
それを元に、募集条件の吟味や、設備追加などによって、
プラスマイナスされて募集賃料が決められるわけです。
このような対策は、たとえば、
賃料の値下げ、据え置き、フリーレント、設備追加、
リフォーム、リノベーションなど、いくつもありますが、
どれが良くて、どれはダメ、ということはありません。
オーナー様の賃貸経営に対する考え方や、
経営する予定期間によって選ぶ対策は異なるはずです。
では、どうやって選べばよいのか?
その判断基準は2つあります。
対策を決定するときの2つのポイント
1つめは、募集開始から3年~5年間の収益
(家賃収入からかけた費用を差し引いた額)
を成果とすることです。
「すぐに決まった」とか、
「6カ月もかかった」という目先ではなく、
一定期間に稼げた収益が重要です。
たとえ決まるのに6カ月を要したとしても、
募集賃料を査定より10%も高く設定した結果なら
収益は満足レベルのはずです。
(こんなラッキーな例は安易に期待できませんが)
反対にすぐ決まったとしても、
募集賃料を査定より10%も低く設定した結果なら
収益はそれほど多くはないはずです。
賃料査定を元に募集対策を決めるときは、
中期の想定を綿密に立てることが重要です。
もちろん結果は「やってみないと分からない」
部分がありますが、
その結果を経験として積み上げていくことが、
長い賃貸経営において生きてくるのです。
2つめは、地域の需要を正確につかむことです。
人気設備のベスト3でも、
この地域に転入希望している人が、
その設備にお金を払うとは限らないのです。
このテーマについては別の機会に解説したいと思いますが、
対策を決定するときの判断のベースになるのが、
「賃料査定による適正賃料」です。
これが現実と離れていたら、
想定した結果を得ることができないでしょう。
どのように賃料査定されるのか
ここからは、どのように査定されるのか、
について説明いたします。
不動産の査定には、売買物件の価格査定と、
賃貸物件の賃料査定があります。
土地や建物には価格査定マニュアルがあり
システム化されているのですが、
賃料査定には、一般化されたマニュアルはありません。
各社がデータを基に属人的に判断することが多く、
担当や会社によって査定に差があります。
勘と経験のみに頼るのでなく、
科学的に、データに基づいて査定する必要があります。
賃料査定の第一段階は「相場による算定」です。
査定する貸室と同じエリアの、
タイプ、間取り、専有面積、賃料条件、㎡単価、
築年数、交通アクセスが近い類似物件を一覧にして、
この地域の相場を把握します。
たとえば、査定物件が、
駅から徒歩10分(駅立地でないエリアでは地域名など)、
築18年のRC造、42㎡の2DKの場合、
その類似物件一覧の賃料条件を見比べることで相場家賃が算定できます。
第二段階では加算と減算をしていきます。
まず室内設備です。
全国賃貸住宅新聞社(東京都中央区)の
「この設備がなければ入居が決まらないトップ10」によると、
単身者とファミリーともに、
エアコン、TVモニター付きインターホン、室内洗濯機置き場が
ベスト3に入っています。
お客様が、これらを必須設備と認識されているなら、
付いていないと減算の対象とする、というわけです。
さらに
「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まるベスト10」によると、
単身者とファミリーともに、
インターネット無料、エントランスのオートロックがベスト3に入っています。
ほかに、単身者は高速インターネットや宅配ボックス、
ファミリーは追いだき機能やシステムキッチンが上位にありますので、
これらは大きな加算ポイントとなるでしょう。
さらに、部屋の階数、角部屋か中部屋か、
ベランダの向き、収納能力、間取りの使いやすさ、
なども加算や減算の対象になります。
第三段階は現地確認です。
不動産会社が初めて査定する物件ならば現地を見るのは必須です。
自社エリア外の物件の場合は、
現地の不動産会社を何社も訪問して、
相場と需要について情報収集をします。
賃貸募集にとって
「賃料査定による適正賃料」が重要であることを
ご理解いただけたら幸いです。
査定は不動産会社が行いますので、
オーナー様は、不動産会社とご一緒に、
賃貸収益が最も高くなる募集戦略を考えて実施してください。