Q.契約して2年8ヶ月後に退去する借主から「エアコンとウォシュレットを置いていきたい」と申し出がありました。了承したいのですが、どんな問題が考えられますか?
A.この設備は3年経っていないので、破棄するのは「もったいない」ですね。オーナーさんには次の募集時に、二つの選択肢があります。ひとつは、募集条件でエアコン等を「設備」として貸し出すこと。もうひとつは、「設備」とはせずに募集することです。
Q.それは、どう違うのですか?
A.「設備」とする場合の貸主のメリットは、その分、募集条件が良くなることです。賃料が高く貸せたり、募集期間を短くすることができますね。デメリットは、故障した時のメンテナンス費用を貸主が負担しなければならないです。
反対に、「設備」としない場合のメリットは、内見時のお客様が「エアコンがあって便利」と判断してもらえることでしょう。デメリットは、入居を決めたお客様が「邪魔だから取り外してもらいたい」と言ってきたとき、貸主が自費で取り外すか、借主に「邪魔なら勝手に取り外して」と言うことになります。後者のような返答はあり得ないと思いますけど・・。
取り付けて7~8年後には必ず持ち上がるテーマだと思います。
Q.どちらがいいでしょうか?
A.4~5年以上使えるなら、「設備」として貸した方がいいと思います。そして積極的に募集条件としてアピールすべきでしょう。エアコンや温水洗浄便座は、もはや「有って当たり前」と思われているのですから。「設備としない」という貸し方は、貸主が提供するスペースの中に、貸主が責任を持たない「もの」が存在するという、中途半端な状態ですね。それなら退去時に「取り外して」と言った方がスッキリすると思います。
ところで、質問が二つあります。退去する借主は、エアコン等を取り付けるとき、事前にオーナーさんの承諾を得ましたか?もうひとつ、賃貸借契約書の条項に、「造作買取請求権は行使できない」というような条項が入っていますか?
Q.借主さんからは事前に連絡が入り、「専門業者なら許可します」と答えてあります。契約書には、そのような条項が入っていました
A.ご質問の意図とは外れますが、借主には「造作買取請求権」というものがあります。借主が設置した造作物は、借主から買取の請求があったときに、貸主は応じなければならないという、借地借家法第33条に定められた権利です。
Q.では私は借主さんに、お金を払わなければならないのですか?
A.ご安心ください。今回のケースでは、その必要はありません。造作買取請求権とは、
1.借主が貸主の同意を得て設置した造作であること。2.契約が期間の満了か解約の申入れで終了したこと。 このときに、3.借主は貸主にその造作を時価で買い取ることを請求できる。 となっていて、貸主は時価で買い取らなければならなくなります。しかし、この請求権は、当事者間の合意により排除することも可能なのです。ですから、契約書の特約に「造作買取請求権は行使できないものとする。」と書いてあることが重要だったのです。ちょっとしたことですが、今回のようなケースでは大事な特約条項になりますね。